小紅書がワールドカップ放映権取得、DAU2億突破と月間5000万人増を狙う
小紅書が2026ワールドカップの放映権を取得。10億元未満のコストで、停滞するDAUの2億突破と月間ユーザー5000万人増を目指す戦略的布石を打ち出した。
放映権のコストは「10億元に満たない」
2026年6月1日——中国のソーシャルECプラットフォーム「小紅書(Xiaohongshu)」が、今年開催される北中米ワールドカップ(米国・カナダ・メキシコ共催)の放映権を取得したことが、業界の大きな話題となっている。
同社は5月28日、2026ワールドカップにおける国内唯一のインターネットコミュニティプラットフォームとして、生放送、オンデマンド、ショート動画すべての全量コンテンツ権利を正式に発表した。
注目すべきは、そのコストだ。小紅書のシニア運営スタッフである林東(仮名)は中国メディア「知危」に対し、「今回の支出は、世間の推測よりも少なかった。10億元(約200億円)に満たない」と明かしている。これまでこの権利を手にしていたTikTokやyouku(中国の動画プラットフォーム)と比較すると、価格は確かに低下傾向にあるようだ。
コストが下がったからといって、小紅書の期待値が低いわけではない。むしろ逆だ。同社は今回のワールドカップに、かつてないほどの大きな期待を寄せている。
停滞するDAU、1.7億の壁
小紅書が放映権取得に動いた背景には、ユーザー数の伸び悩みがある。
林東は「現段階で他のプラットフォームと比較すると、小紅書はワールドカップの放映権をより必要としている。現在のプラットフォームのDAU(日間アクティブユーザー数)は1.7億で、長い間頭打ちだった」と率直に語った。
具体的な目標は明確だ。今回のワールドカップをきっかけにDAUを2億突破させ、現在4億のMAU(月間アクティブユーザー数)をさらに5000万人引き上げることを狙っている。林東は社内の状況について「今、会社全体が臨戦態勢で、SOHOとCapitaLand Crystalの2つのオフィス拠点は夜も明かりが灯り続けている」と語り、全社を挙げての体制で臨んでいることを示した。
男性ユーザー獲得という切実な課題
「ワールドカップと小紅書はブランドイメージが合わないのでは」という声は、発表直後からネット上で相次いでいる。「サッカーファンが小紅書のコンテンツ基準に適応できるか疑問だ」といった懐疑的な意見も目立った。
しかし、小紅書側の論理は極めて明快だ。不足しているものを補えばいい——それだけのことだ。
林東は「現在、事業面でのコアユーザーの増加圧力が特に大きく、特に男性ユーザーの獲得が課題となっている。明らかなユーザー増加の見込みがあるのは男性層のみだ」と述べた。
小紅書は従来、美容やファッション、ライフスタイルを中心とした女性向けプラットフォームという色が強かった。しかし成長のためにはユーザー層の拡大が不可欠であり、スポーツコンテンツはその突破口として最も有力な領域だという判断がある。
易観(Analysys)のシニアアナリストである馬世聡氏は、小紅書のこの動きについて「高価値なスポーツIPイベントを借りてトラフィックの再成長の機会を得るため、特にこれまで関連性が薄かった男性ユーザーや一般スポーツファン層を開拓する狙いがある」と分析している。
さらに馬氏は、小紅書が得意とする「お気に入り商品を勧める」という「種草(商品レコメンド)」のロジックを活用し、イベントコンテンツからファッション、スポーツ、健康、飲食などの業種にわたるレコメンドシナリオを展開できる可能性にも言及した。
2022年から続くスポーツ分野への布石
今回の放映権取得は突然の決断ではない。小紅書は実は、過去数年にわたりスポーツ分野での着実な布石を打ち続けてきた実績がある。
2022年のカタール・ワールドカップ時には、生放送権はなかったものの、シメオネ、モウリーニョ、ジダンといった世界的なサッカー選手と独占契約を結び、スポーツ関連のトラフィックと話題性を獲得した実績がある。
2024年の欧州選手権(EURO)ではさらに一歩進み、エムバペをプラットフォームの広告キャラクターに起用した。同年のパリ・オリンピック期間中には、エムバペと中国の元陸上選手・劉翔を起用した共同CMを制作し、「フレンチ・エム語」というフレーズがSNS上で数多くの二次創作コンテンツを生み出す現象を引き起こした。
その後も小紅書はスポーツ分野での投資を拡大し続け、ドイツ・ブンデスリーガ、ドイツ卓球リーグ、東北地区都市間サッカーリーグなどの放映権を相次いで取得し、F1レースの商業マーケティング活動にも多数携わってきた。
生放送対応に向けたインフラ強化
大規模なスポーツイベントの生放送に対応するため、小紅書は技術面での準備も着実に進めてきた。
まず今年3月から、横型動画専用ページを少数テストで試験的に公開し、長尺動画や生放送コンテンツにより適した視聴・インタラクティブ環境の構築に着手した。4月には無料の4Kスーパーハイビジョン動画の全量公開に踏み切り、ドルビーサラウンドへの対応も実現した。
ワールドカップの放映は横型画面、長時間、強リアルタイムというコンテンツ形式を本質的に要求する。百連咨询の創設者で小売EC業界の専門家である荘帥氏は、今回の放映権取得を「小紅書が動画・生放送分野で戦略的な一歩を踏み出し、中長尺動画の布石と連動させるもの」と位置づけている。2025年にかけて中長尺動画の画質と配信メカニズムを順次アップグレードし、イベントを梃子として映像分野での弱点を補う狙いがあるという。
試合観戦から種草へ——UGCコミュニティの強みを活かす差別化戦略
生放送の体制も充実している。小紅書アプリ、ウェブ版、スマホの画面ミラーリングなど全端末で無料視聜が可能だ。解説陣には范志毅や謝暉といった中国サッカー界の知名人を迎え、全試合の解説を展開する。
さらに「ワールドカップ・トークオフボール」という専用の毎日更新コーナーを設け、毎日正午12時にサッカー解説者とクリエイターが共同で試合分析や戦術解説、ファンとの交流を届ける仕組みも用意された。アプリ内にはワールドカップ専用チャンネル、試合予想機能、専用ファンカードなどのカスタマイズ機能も搭載される。
荘帥氏は、小紅書の差別化戦略について、以前のTikTokやyoukuとは異なるアプローチを指摘する。UGC(ユーザー生成コンテンツ)コミュニティという特性に依拠し、ワールドカップを「生活化」し、公式解説者の招致とユーザーの二次創作を奨励することで「試合観戦→コミュニティ巡回→お気に入り商品のレコメンド」というプラットフォーム好循環の強化を図っているという。
馬世聡氏も、ワールドカップというトップスポーツIPが小紅書にもたらす価値は、持続的に消費できるコンテンツ資産および広告機会にとどまらないと指摘する。PGC(プロフェッショナル生成コンテンツ)やUGCの素材としての創作拡張にもなり、「短尺→中尺→長尺」という多層コンテンツマトリクスを形成し、コンテンツ生態系そのものを補完できる可能性があるという。
避けられない課題——コミュニティ運営の腕の見せ所
ただし、すべてが順風満帆というわけではない。小紅書にとって最も難しいのは、ワールドカップ期間中およびその後のコミュニティ運営にある。
象徴的なのがF1の例だ。小紅書でF1関連コンテンツが人気を博した際、注目されたのはレースそのものやドライバーのパフォーマンスではなかった。上海グランプリでのチェックインスポットや、ドライバーの服装、レーシングウェアのおすすめといったライフスタイル寄りのコンテンツが大きな反響を得たのだ。こうした傾向は、男性ユーザーを引き付け、定着させようとする小紅書の当初の意図と必ずしも一致しない可能性がある。
荘帥氏は、ワールドカップ後に小紅書が予想以上の成果を得るためには「試合前・試合中・試合後の完全なプラットフォーム運営プラン」を効果的に完成させられるかどうかが試練になると見ている。
実際の運営プロセスでは、複数のリスクが想定される。時差の影響によるブランド広告の転換率低下、コミュニティの雰囲気衝突によるコア女性ユーザーの離脱、そして持続的なコンテンツ不足による男性ユーザーの定着難——いずれも無視できない課題だ。
を通じて儀礼を乗り越えられるか
とはいえ、これらの困難は小紅書にとって初めての経験というわけではない。Weibo(Weibo)やTikTokなど、中国のソーシャルメディアプラットフォームの多くが、大規模スポーツイベントの放映権取得と運営で同様の課題に直面し、乗り越えてきた実績がある。
今回のワールドカップ放映権取得は、小紅書にとってユーザー構造の転換を図るための戦略的な投資であり、成長の停滞という課題に対する正面からの回答だ。10億元未満というコストは、5000万人の月間ユーザー増という目標と比較すれば、十分に採算が取れる賭けと言えるだろう。
問題は、この「買い物」が最終的に何をもたらすかだ。男性ユーザーを取り込みつつ、既存の女性コミュニティを維持し、さらには種草の好循環を確立する——この三つの課題を同時に解決できるかどうかが、小紅書の次の成長を左右する。
ワールドカップ開幕まで残りわずか。中国のテック業界の注目は、小紅書のこの大胆な一手がどのような結果を生むのかに集まっている。
よくある質問
- 小紅書がワールドカップ放映権を取得した目的は何ですか?
- 主な目的は、停滞しているDAU(日間アクティブユーザー数)の2億突破と、月間アクティブユーザー5000万人の増加です。特に男性ユーザーの獲得が切実な課題となっており、スポーツIPを活用してユーザー層の拡大を図ることが狙いです。
- 小紅書のワールドカップ生放送はどこで視聜できますか?
- 小紅書アプリ、ウェブ版、およびスマホの画面ミラーリングなど全端末で無料で視聜可能です。范志毅や謝暉らによる全試合解説や、毎日正午の専用トーク番組なども用意されています。
- 小紅書はなぜワールドカップの放映権に適していると考えられるのですか?
- ユーザー生成コンテンツ(UGC)コミュニティという特性を活かし、試合観戦からコミュニティ交流、さらには商品レコメンドへとつながる好循環を作りやすい点が強みです。ただし、サッカーファンの流入が既存の女性ユーザー層と衝突しないかが課題となります。
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