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スペースシャトル終了15年、NASA商業有人宇宙船の現実

スペースシャトル最終ミッションSTS-135から15年。NASAが依存した商業有人宇宙船はSpaceX Crew Dragonが成功を収める一方、Boeing Starlinerは遅延と不具合に悩まされ続けている。米国有人宇宙飛行の転換点を検証する。

8分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

スペースシャトル終了15年、NASA商業有人宇宙船の現実
Photo by NASA on Unsplash

2026年7月26日で、スペースシャトルが最後に地球へ帰還してから15年が経過した。The RegisterのRichard Speedの報道によれば、スペースシャトル・アトランティスは2011年7月21日にケネディ宇宙センターのシャトル着陸施設へ降り立ち、30年に及ぶNASAのスペースシャトル計画に終止符を打った。

この節目に改めて問われるのは、NASAがその後依存することを選んだ商業有人宇宙船の成否である。

最終ミッションSTS-135が遺したもの

STS-135は当初、前のSTS-134(エンデバー)のための打ち上げ待機ミッションとしてSTS-335の番号を与えられていた。コロンビア号空中分解事故以降、シャトル計画では「打ち上げ待機(Launch On Need, LON)」ミッションが常設された。1機のシャトルが損傷した場合、別のシャトルを迅速に打ち上げて乗員を救出するための仕組みだ。LOMには別個のSTS-3xx番号が割り当てられ、例えばSTS-116の救援はSTS-317、STS-117の救援はSTS-318といった具合だった。STS-125ハッブル宇宙望遠鏡整備ミッションにはSTS-400が待機していた例外もある。

しかし計画の終了が決まった以上、STS-135には待機ミッションが設定できなかった。シャトルプログラムそのものが縮小されていたからだ。もしアトランティスが安全に帰還できなければ、乗員は国際宇宙ステーション(ISS)からソユーズカプセルで降りる以外に選択肢がなかった。また乗員は4名のみで、これは1983年のチャレンジャーSTS-6以来の少なさだった。

クルーの司令官はChristopher Ferguson。彼は後にBoeingの商業乗員プログラムに参加し、スターライナーのクルーにも指名されたが実際には搭乗しなかった。パイロットはDouglas Hurleyで、後に2020年にSpaceX Crew Dragonの初有人飛行試験に搭乗している。ミッションスペシャリストはSandra MagnusとRex Walheimが務めた。

打ち上げは2011年7月8日、帰還は同月21日。これをもって米国は自国の有人宇宙船によるISSへのアクセス手段を失った。

空白の9年と商業乗員プログラム

スペースシャトル退役後、米国は宇宙飛行士のISS往還をロシアのソユーズに依存せざるを得なくなった。この依存期間は、当初の想定を大きく超えて9年に及んだ。

NASAはシャトル終了後、民間企業による有人宇宙輸送を確立するため商業乗員プログラム(Commercial Crew Program)を立ち上げ、SpaceXとBoeingに契約を授与した。このプログラムの目的は米国本土からの打ち上げ能力を回復することにあった。

SpaceXは2020年5月、Crew Dragonによる初の有人飛行試験(Demo-2)でDouglas HurleyとRobert BehnkenをISSへ送り届け、9年ぶりに米国本土からの有人打ち上げを実現した。その後Crew Dragonは定期運用に入り、NASAの主要な輸送手段として機能している。

一方BoeingのStarlinerは、2024年に有人試験ミッション(Boeing Crewed Flight Test)を実施したものの、軌道上での弁の故障や推進系の不具合が相次いだ。NASAは安全性を考慮し、スターライナーを無人で地球へ帰還させ、乗員2名は2025年にSpaceXの宇宙船で帰還させる判断を下した。The Registerの記事によれば、NASAとBoeingはスターライナーで再度有人飛行を行うための日程をいまだ確定できていない。

商業有人宇宙船が突きつけた現実

15年前、スペースシャトル計画の終了は米国宇宙政策の大きな転換点だった。シャトルは再使用可能で、大きな貨物室を持ち、衛星の回収やハッブル宇宙望遠鏡の整備など多様なミッションを遂行できた。一方その運用コストは1回あたり約4億5000万ドル(打ち上げ頻度を考慮した平均)とされ、維持費も膨大だった。

NASAは政府直営の宇宙船開発から撤退し、民間企業に輸送サービスを委託するモデルへ移行した。この判断は、SpaceXの成功によって一定の正しさが証明されたと言える。Crew Dragonはシャトルよりはるかに低コストでISSへ乗員を運び、信頼性も高い。2026年現在、Crew Dragonは定常的なローテーション任務をこなし、民間宇宙旅行ミッション(Inspiration4、Polaris Dawnなど)も実施している。

しかしBoeingのスターライナーは、長期にわたる技術的問題と遅延により、NASAに「もう一つの選択肢」を提供できていない。2014年にSpaceXと同時に契約したにもかかわらず、運用開始は10年以上遅れ、しかも最初の有人飛行は不完全に終わった。The RegisterのRichard Speedは「Boeingの災難カプセル」と表現している。スターライナーが本来果たすべき役割——冗長性の確保——はまだ実現していない。

さらに、シャトルが提供していた大型貨物の輸送能力(与圧・非与圧問わず)は、現在の商業宇宙船では完全には代替されていない。ISSへの大型モジュールや実験装置の搬入は、日本のHTVや米国のCargo Dragon、Northrop GrummanのCygnusなど無人補給機に依存している。有人宇宙船に求められる役割は往還輸送に限定されており、シャトル時代の多機能性は失われたままだ。

編集部の見解

短期的には、スターライナーの不具合原因の特定と再飛行計画の策定が喫緊の課題だ。NASAは2025年後半から2026年にかけて再試験の可能性を模索しているが、具体的な日程は未定である。この間、米国の有人宇宙輸送はSpaceX Crew Dragonに完全依存している状態が続く。もしCrew Dragonに何らかのトラブルが発生した場合、ISSへのアクセスは再びソユーズや将来的な商業宇宙船(Sierra SpaceのDream Chaserなど)に頼らざるを得ない。冗長性の欠如は現時点で最大のリスク要因である。 長期的視点では、商業乗員プログラムは成功と失敗の両面を露呈したと言える。固定価格契約によりコスト削減と革新を促進した点は評価できる。しかし2社同時契約の意義は、片方が機能不全に陥ったことで損なわれている。今後の有人月面探査(アルテミス計画)でもSpaceXのStarshipとBoeingのSLSが併用される構図だが、同様のリスクが潜在している。また、スターライナーの遅延は、宇宙開発における大手伝統企業と新興企業の技術力・組織力の差を浮き彫りにした。

参考

よくある質問

スペースシャトルが終了した主な理由は何ですか
最大の理由は運用コストの高騰と安全性の問題です。1回の打ち上げに約4〜5億ドルかかり、コロンビア号とチャレンジャー号の2度の重大事故で14名の宇宙飛行士が死亡しました。また老朽化も進み、維持費が増大していたため、NASAはより低コストで安全な民間宇宙船への移行を決定しました。
SpaceX Crew DragonとBoeing Starlinerはどのように異なりますか
Crew Dragonは2020年に初の有人飛行に成功し、以来ISSへの定期的な乗員輸送を担っています。一方Starlinerは2024年の有人試験飛行で推進系の不具合が発生し、乗員を乗せず無人帰還しました。NASAとBoeingは再飛行の日程を確定できておらず、運用開始は大幅に遅れています。技術的には両機ともカプセル型ですが、設計思想や開発管理体制に違いがあります。
現在ISSへのアクセス手段はどうなっていますか
米国側はSpaceX Crew Dragonが唯一の有人輸送手段です。ロシアのソユーズも利用可能ですが、ウクライナ情勢以降は政治的な制約があります。無人補給はSpaceX Cargo Dragon、Northrop Grumman Cygnus、日本のHTV-Xが担っています。将来的にはSierra SpaceのDream ChaserやBoeing Starlinerの復帰が期待されていますが、現時点ではCrew Dragonへの一極集中状態が続いています。
出典: The Register

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