Yuexin Semiconductor、累積赤字100億元超でIPO申請
中国半導体ファウンドリYuexin SemiconductorがIPOを申請。売上急成長も累積赤字100億元超、主力事業の粗利率はマイナス。高研究開発費が収益化できず収益性に課題。
Yuexin Semiconductor Technology Co., Ltd.(以下Yuexin Semiconductor)は2026年6月15日、深セン証券取引所の成長企業向け市場(GEM)へのIPO上場を申請した。公募株数は最大7,885万株を予定する。
同社の2023年から2025年までの売上高は10億4,400万元、16億8,100万元、25億8,200万元と急成長し、年平均成長率は57.26%に達した。しかし、同期間の純損失はそれぞれ19億1,700万元、23億2,700万元、24億9,000万元と拡大を続け、3年間の累積損失は67億3,400万元に上る。2025年末時点での未処分利益はマイナス100億8,100万元であり、設立から7年間で累積赤字が100億元を超えたことになる。
最も深刻な問題は、主力事業である集積回路ファウンドリとパワーデバイスファウンドリの双方が長期にわたりマイナスの粗利率で運営されている点だ。2023年から2025年の集積回路ファウンドリの粗利率はそれぞれ-122.02%、-67.74%、-52.43%。パワーデバイスファウンドリも-94.59%、-84.24%、-79.67%と赤字幅は縮小傾向にあるが、依然としてコストが売上を大きく上回っている。2023年には集積回路ファウンドリで100元の売上を得るために122元以上のコストがかかり、差し引き22元以上の損失が発生する構造だった。
高研究開発費と政府補助金への依存
同社の損失要因として、高額な研究開発費が挙げられる。2023年から2025年の研究開発費はそれぞれ6億500万元、4億4,600万元、4億2,200万元で、3年間の累計は約14億7,300万元。売上高に占める研究開発費比率は57.31%、25.58%、15.29%と、2025年を除き業界平均を大幅に上回る(同期間の業界平均は15.35%、16.37%、19.04%)。一方、販売費は3年間合計でわずか1億1,600万元と極めて低く、「研究開発重視、マーケティング軽視」の姿勢が顕著だ。
収益の顧客集中度も高い。上位5社への売上高は2023年が5億5,020万2,000元(売上比53.9%)、2024年が9億8,460万7,700元(60.34%)、2025年が15億7,389万5,600元(62.68%)と、収益の過半数を上位5社に依存している。同社は目論見書で、新規顧客開拓の停滞や既存顧客との関係悪化が経営に重大な影響を及ぼす可能性があるとリスク要因として開示している。
Yuexin Semiconductorは多額の政府補助金に支えられている側面もある。報告期間中に当期損益に計上した政府補助金は5億3,690万9,300元、2億5,332万6,600元、4億1,270万2,300元と、3年間の合計は約12億300万元。補助金がなければ赤字幅はさらに拡大していた計算になる。
特殊プロセスファウンドリの事業構造
Yuexin Semiconductorは特殊プロセスの12インチウェハファウンドリに特化し、国内外の半導体設計企業に受託製造サービスを提供している。同社の目論見書によれば、売上高の約74〜80%を集積回路ファウンドリが占め、残りをパワーデバイスファウンドリが構成する。
研究開発への投資額は大きいものの、それが粗利率の改善や新たな収益源の創出に結びついていない。2023年には売上高の57%を研究開発に費やしたが、同年の粗利率は依然としてマイナス122%という深刻な水準だった。2025年には研究開発費比率が15.29%まで低下し、粗利率も-52.43%まで改善したが、黒字化の目処は立っていない。
中国半導体産業の国産化推進の文脈において、Yuexin Semiconductorは政策的な支援を受けやすい立場にある。しかし、政府補助金に依存した収益構造は、将来の政策変更リスクをはらむ。同社も目論見書で「政府の優遇政策変更により経営業績が悪化する可能性がある」と警告している。
競合との比較と収益化の壁
同業他社と比較した場合、Yuexin Semiconductorの研究開発費比率の高さは際立つ。台湾のTSMCや中国のSMIC(中芯国際)などの大手ファウンドリと単純比較はできないが、ファウンドリ事業における一般的な研究開発費比率が15〜20%程度であるのに対し、同社は2023年に57%を記録した。その後の低下傾向は規模の拡大によるものだが、依然として収益性の改善には結びついていない。
売上高成長率57.26%という数字は、中国国内の半導体需要の高まりを反映している。一方で、粗利率がマイナスであるということは、製造コストが販売価格を上回っていることを意味する。規模の経済が働けば単位あたりコストは低下するが、現時点ではその効果は限定的だ。同社の事業モデルは「赤字受注で市場シェアを拡大し、将来のスケールメリットで黒字転換を図る」という戦略に近いが、実現の確度は不透明である。
編集部の見解
短期的影響:Yuexin SemiconductorのIPOが承認されるかどうかは、深セン証券取引所が収益性をどの程度重視するかにかかっている。中国では半導体の国産化を国家戦略として推進しており、戦略的意義が評価される可能性はある。しかし、累積赤字100億元超、主力事業の粗利率マイナスという財務内容は、機関投資家の警戒を招く。3〜6ヶ月以内にIPO審査の結果が判明する見通しだが、上場後も継続的な資金調達と赤字解消のロードマップ提示が求められると評価できる。
長期的視点:中国半導体ファウンドリ市場では、SMICやHua Hong Semiconductorなど先行企業が存在する。Yuexin Semiconductorが差別化を図るには、特殊プロセスにおける技術優位性の確立が不可欠だ。1〜3年のスパンで見た場合、政府補助金への依存度を下げつつ、粗利率をプラスに転換できるかが最大の焦点となる。研究開発投資が実を結び、高付加価値プロセスの量産に成功すれば赤字解消の道は開ける。しかし、現状のままでは「研究開発の赤字補填を売上拡大で埋める」という持続不可能なモデルが続く可能性が高いと見る。
編集部からの問い:Yuexin Semiconductorの事例は、中国の半導体スタートアップが直面する「政策支援と市場競争のはざま」を象徴している。売上成長と収益性のトレードオフをどう解決するかは、同社だけでなく中国半導体産業全体の課題と言えそうだ。また、高い研究開発投資が収益化に結びつかない要因として、技術のコモディティ化や特許の壁などの外的要因はないのか。これらの点を踏まえた上で、投資家はどのような評価軸で同社を判断すべきか、議論の余地が残されている。
参考
- 钛媒体「两大主業持続負毛利,粤芯半導体高研発難破亏损困局|IPO观察」 — 2026-06-11公開
よくある質問
- Yuexin Semiconductorの主力事業は何か
- 12インチウェハを使用した集積回路ファウンドリとパワーデバイスファウンドリ。売上の約8割を集積回路ファウンドリが占める。
- 粗利率がマイナスとはどういう状態か
- 製品の販売価格が製造原価を下回っている状態。100元の売上を得るために122元のコストがかかるなど、赤字で受注していることになる。
- なぜ売上は成長しているのに赤字が続くのか
- 高い研究開発費と、粗利率がマイナスであることが主因。規模の拡大により粗利率は改善傾向にあるが、依然として赤字幅は拡大しており、収益化の道筋は見えていない。
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