ロッキード・マーティン、HPM対ドローンシステム公開
ロッキード・マーティンが新たな対ドローンシステム「Morfius X-Rotor」を公開。地上発射式の高電力マイクロ波(HPM)により、1ミッションで最大50機の敵ドローンを無力化する。再利用可能で低コスト、センサー非依存の設計が特徴。
ロッキード・マーティンは、対ドローンシステムの新たな製品「Morfius X-Rotor」を公開した。Tom’s HardwareのMark Tysonが報じているところによれば、このシステムは地上発射式の高電力マイクロ波(HPM)を搭載し、1回のミッションで最大50機の敵ドローンを無力化できる能力を持つ。
開発の背景
敵対勢力によるドローン群(スウォーム)攻撃は、現代の戦場において最も深刻な脅威の一つとなっている。ロッキード・マーティンは、こうした状況に対応するためMorfius X-Rotorを開発した。同社によれば、本システムは米国戦争省が策定した「2025-2028年迅速対応対UASロードマップ」にも適合するとされる。
従来の対ドローン手段は、ミサイルや弾丸を用いた物理的破壊が主流だった。しかし、一発あたりのコストが高く、多数のドローンを相手にするスウォーム攻撃には非効率である。また、爆発を伴うため副次的被害(コラテラルダメージ)の問題もあった。Morfius X-Rotorはこうした課題を、電磁波による無力化というアプローチで解決しようとしている。
技術的詳細
Morfius X-Rotorの最大の特徴は、高電力マイクロ波(High Power Microwave, HPM)を用いて敵ドローンの電子回路を破壊する点にある。レーザー光線のように一点を熔解するのではなく、広範囲に電磁パルスを放射することで、ドローンの制御基板や通信モジュールを瞬間的に無力化する。この方式は爆薬を用いないため、地上への副次的被害を抑えられるという利点がある。
ロッキード・マーティンによれば、本システムは「センサー非依存(sensor-agnostic)」であり、専用のレーダーや火器管制センサーを必要としない。既存の指揮統制(C2)システムに統合可能で、強力な電子戦環境下でも動作できる設計となっている。これは、敵が電波妨害(ジャミング)を仕掛ける状況でも機能することを意味し、実戦での有用性を高めている。
さらに、Morfius X-Rotorは地上発射式でありながら、飛行後に現場で回収し、再使用できる点も大きな強みである。従来のミサイル方式では使い捨てが前提だったが、本システムは同一機体を繰り返し運用できる。これにより、「1機あたりの無力化コスト(cost per kill)」を大幅に低減できると同社は主張している。
採用実績と検証状況
Morfius X-Rotorは、2017年から飛行実績を持つMorfiusシリーズの派生型として開発された。過去には複数の米国州でフィールドテストが実施されており、システムの基本性能は実証済みとされる。ロッキード・マーティンの幹部(VP)は、今回のデモンストレーション映像について「対ドローン能力の新たな基準を示すものだ」とコメントしている。
ただし、公開された映像が実射テストのものなのか、コンピュータグラフィックスによるレンダリングなのかは明らかにされていない。Tom’s Hardwareの記事でも、この点については判断を保留している。実証段階にあるシステムであることを理解した上で評価する必要がある。
競合技術との比較
HPMを用いた対ドローンシステムとしては、他にもEpirus社の「Leonidas」が知られている。Epirus Leonidasは地上車両搭載型のシステムで、2025年にインディアナ州で実施された実弾試験では、「61機中61機」のドローンを無力化したと報告されている。Morfius X-Rotorは地上発射式の飛行型である点が異なり、より機動的な運用が可能と見られる。
ロッキード・マーティンは、Morfius X-Rotorを「地上発射型で現場再使用可能な空中HPMシステムとして唯一の存在」と位置づけている。特に、火器管制レーダーに依存しない点は、電子戦環境での生存性を高める要素として強調されている。
運用シナリオと今後の展開
Morfius X-Rotorは、前線基地や重要施設の防衛、部隊護衛など、多様なシナリオでの運用が想定される。複数機を同時に展開することで、広範囲にわたるドローンスウォームにも対処可能だ。再使用が可能な点から、長期任務における補給負荷の低減も期待される。
ロッキード・マーティンは、本システムを米国国防総省や同盟国向けに売り込むとみられる。ウクライナ戦争や中東の紛争でドローンの脅威が顕在化している現在、HPM方式の対ドローンシステムへの関心はさらに高まる可能性がある。実証試験の結果次第では、性能の信頼性が問われることになるだろう。
編集部の見解
短期的には、Morfius X-RotorのようなHPM対ドローンシステムが、実戦配備に向けた最終段階に入ると見られる。既存のミサイル方式に比べて圧倒的に低い撃墜コストは、防衛予算の制約が厳しい各国にとって大きな魅力となる。ただし、電子戦環境下での実効性や、天候・地形による影響など、検証すべき課題も少なくない。今後6ヶ月以内に米国国防総省が実施する大規模評価試験の結果が、技術の真価を判断する上で重要になるだろう。 長期的視点では、HPM技術は対ドローンに留まらず、陸上車両や艦船、航空機の自己防御システムへ応用が拡大する可能性がある。一方で、ドローン側も耐電磁パルス対策を施してくるため、兵器と防御のいたちごっこが加速するのは避けられない。1〜3年のスパンで見れば、HPMシステムは無人戦のコスト構造を根本的に変える転換点となるかもしれない。民生分野でのEMC(電磁両立性)規制との関係も、技術の普及を考える上で見過ごせない論点だ。
参考
- 「 Lockheed Martin unveils counter-drone system that can ‘neutralize up to 50 enemy drones in a single mission’ — sensor-agnostic system uses High Power Microwave to purge enemies from the sky 」, by Mark Tyson — Tom’s Hardware, 2026-07-25T10:00:00.000Z (ARR)
- 元記事URL: https://www.tomshardware.com/tech-industry/drones/lockheed-martin-unveils-counter-drone-system-that-can-neutralize-up-to-50-enemy-drones-in-a-single-mission-sensor-agnostic-system-uses-high-power-microwave-to-purge-enemies-from-the-sky
よくある質問
- Morfius X-Rotorはどのようにドローンを無力化するのか
- 高電力マイクロ波(HPM)を放射し、ドローンの電子回路や通信モジュールを瞬間的に破壊する。爆発を伴わないため副次的被害が少なく、センサーに依存しない設計で電子戦環境でも動作可能。
- 従来の対ドローンシステムと比較した利点は何か
- ミサイル方式と比較して1機あたりの無力化コストが大幅に低く、機体を回収して再使用できる。また、専用レーダーが不要で既存のC2システムに統合可能な点も強みとされる。
- 実戦配備の時期はいつか
- 現時点で具体的な配備スケジュールは公表されていない。複数の米国州でフィールドテストが行われている段階であり、米国戦争省のロードマップに沿って開発が進められている。
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