Cisco、脆弱性検出特化の軽量SLM「Antares」公開
Ciscoが脆弱性検出に特化した小規模言語モデル「Antares-350M」と「Antares-1B」を公開。オープンウェイトながらアクセス制限を設け、ローカル実行でコードを外部に出さない点が特徴。ベンチマークではGoogle Gemini 3 Proを上回る性能を示した。
Cisco Systemsは7月21日、ソフトウェア脆弱性の検出に特化した小規模言語モデル(SLM)ファミリー「Antares」を発表した。同社は、大規模フロンティアモデルに依存せず、既存コードベース内の既知のバグを高精度かつ高速に発見することを目的としている。
リリースされたのは「Antares-350M」(3億5000万パラメータ)と「Antares-1B」(10億パラメータ)の2モデルで、いずれもオープンウェイトモデルとしてHugging Face上で提供される。ただし、アクセスは審査制となっており、誰でも自由にダウンロードできるわけではない。CiscoのAIソフトウェア部門担当上級副社長兼ゼネラルマネージャーであるDJ Sampath氏はThe Registerに対し、「ゲートを設け、適切にアクセス権を付与している」と述べている。
アクセス制限の理由
脆弱性検出モデルは悪用リスクが高いという認識から、Ciscoはアクセスを厳格に管理する方針を取る。現在は学術機関や非営利組織、公共機関のセキュリティチーム、中小規模の組織に対して順次提供を進めている。さらに、両モデルはローカル実行が前提であるため、スキャン対象のソースコードにアクセスするための鍵が必要となる。これにより、外部のクラウドベースLLMのようにコードをAI提供元のサーバーに送信する必要がなく、機密性の高い環境でもセキュリティ分析が可能になる。
モデル名「Antares」は、赤色超巨星アンタレスに由来する。Ciscoの副主席兼チーフAIサイエンティストであるAmin Karbasi氏は、「アンタレスは太陽の約1000倍の大きさだが、空には小さく見える。脆弱性の影響はコードベース全体に巨大だが、その痕跡は100万行の中の1ファイル、数行に過ぎないこともある」と比喩を用いて説明している。
ベンチマークで大規模モデルを凌駕
Ciscoは独自のベンチマークテストを開発し、Antaresファミリーの性能を検証した。同テストはAIモデルがコードベース内のセキュリティ欠陥をどの程度効率的に特定できるかを測定する。同社の主張によれば、Antares-1BはGoogleのGemini 3 Proを上回り、Z.aiのGLM-5.2と同等の性能を示した。また、未公開のAntares-3B(30億パラメータ)はGLM-5.2およびOpenAIのGPT-5.5を上回る結果を出したという。
速度面でも優位性がある。Karbasi氏によれば、500のリポジトリをスキャンする際、Antaresは約15分で完了するのに対し、フロンティアモデルでは5時間を要する。この短縮はコストの大幅な削減にもつながる。
Antares-3Bモデルについては、一般公開されず、必要なコミュニティに責任ある形で提供される方針だ。Karbasi氏は「完全にゲートして、必要な組織だけが利用できるようにする」と述べている。
編集部の見解
短期的には、セキュリティ分野におけるSLMの実用性が改めて証明されたと言える。Ciscoは自社のネットワーク機器やセキュリティ製品と組み合わせることで、脆弱性検出ワークフローを大きく効率化できる可能性がある。また、コードを外部に出さないローカル実行モデルは、金融や政府機関などの規制業界で特に需要が高まると見られる。ただし、あくまで既知のバグ検出に特化している点には注意が必要だ。 長期的には、特定ドメインに特化したオープンウェイトSLMが、汎用フロンティアモデルに取って代わるシナリオが現実味を帯びてくる。特に速度とコスト、秘匿性の三拍子が揃うことで、セキュリティ以外の分野(コード品質、コンプライアンスチェックなど)にも同様のモデルが登場する可能性がある。一方で、アクセス制限をかけることのジレンマも残る。オープンウェイトでありながら審査制を導入する方式は、透明性と安全性のバランスが常に問われるだろう。 編集部としては、今後Antaresの実際の採用事例や、他のセキュリティベンダーがどのようなSLMを投入してくるかが注目点だと考える。
参考
- 「Cisco’s open-weight bug busters take on Google and OpenAI」, by Jessica Lyons — The Register, 2026-07-21T21:17:20.000Z (ARR)
- 元記事URL: https://www.theregister.com/security/2026/07/21/ciscos-open-weight-bug-busters-take-on-google-and-openai/5275817
よくある質問
- Antaresはなぜオープンウェイトなのにアクセス制限があるのか?
- 脆弱性検出モデルが悪用されるリスクを防ぐため。Ciscoは、モデルがサイバー攻撃の手助けになることを避けるため、学術機関やセキュリティ専門チームなど特定の利用者に限定している。また、ローカル実行には対象コードへのアクセス権限も必要で、二重のガードをかけている。
- Antares-1Bは具体的にどの程度の速度で動作するのか?
- 500のリポジトリを約15分でスキャンできる。これは汎用のフロンティアモデル(Gemini 3 ProやGPT-5.5など)が5時間かかるとされるのに対し、大幅に高速であり、コスト面でも有利とされる。
- Antares-3Bは一般ユーザーも利用できるのか?
- 現時点では一般公開されない。Ciscoは3Bモデルを厳重にゲートし、必要とするコミュニティにのみ責任ある形で提供する方針。アクセス権を得るには組織のセキュリティ要件などを審査される可能性が高い。 ## 参考 - [Cisco's open-weight bug busters take on Google and OpenAI - The Register](https://www.theregister.com/security/2026/07/21/ciscos-open-weight-bug-busters-take-on-google-and-openai/5275817) — 2026-07-21公開
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