ユニクロ中国、閉店と新規出店で業績回復 データ活用が鍵
ユニクロ中国は店舗数を減らしながら売上を回復させた。背景にはデータ駆動型の店舗ポートフォリオ最適化とサプライチェーンのデジタル化がある。
ファーストリテイリングが7月9日に発表した2026年度第3四半期決算は、ユニクロ中国本土の業績が明確に回復したことを示した。売上は再び成長に転じ、利益は二桁成長、既存店売上高はプラスとなり、EC売上も二桁成長を維持している。注目すべきは、こうした好業績が店舗数の減少と同時に達成されている点だ。
2024年8月末に926店舗でピークを迎えたユニクロ中国は、その後約2年で871店舗に減少。純減55店舗となっている。店舗数だけを見れば縮小だが、虎嗅網(涌流商業)の報道によれば、同社は「閉店と新規出店」戦略の下で低生産性の小規模店舗を閉鎖し、核心商圏の大型店や旗艦店に経営資源を集中させている。
データ駆動型ポートフォリオの再構築
ユニクロ中国の転換は、単なるコスト削減ではない。店舗ポートフォリオ全体をデータに基づいて再評価し、立地、売上効率、定価販売能力などの指標で選別した結果である。かつて柳井正会長が長期的に3000店舗の展開を構想していたのに対し、現在のファーストリテイリングは「どの店舗を残す価値があるか」を徹底的に精査している。
調整後の旗艦店では成果が顕著だ。2025年9月に開業した長沙五一広場のシティフラッグシップ店は2000平方メートル超、3フロア構成で、開店後の来客数は予想を上回った。同社はこの店舗をグローバル旗艦店の代表例として位置づけ、オーストラリア・メルボルン、フィリピン・マニラ、シンガポールの旗艦店と並べて紹介している。武漢、西寧、成都の旗艦店も同様の改革モデルとされ、閉店と新規出店を経た一部店舗の月間売上は従来の約1.5倍に達したという。
「個店経営」を支えるシステム
店舗調整よりも深い変化は管理体制にある。従来、ユニクロ中国は本社主導の標準化されたチェーン複製モデルで拡大してきた。類似した商品、陳列、ポスター、プロモーションのリズムを迅速に異なる都市に展開する方式だ。ショッピングモールの集客力が伸び、ブランド認知度が向上すれば、このモデルは安定的に機能した。
しかし、中国市場の多様性が増すにつれ、全国一律の商品構成とマーケティングリズムは地域差に適応できなくなった。華南が半袖を必要とする時期に東北は冬物を求め、一線都市の消費者はデザインや新製品に敏感だが、低線都市では価格が重視される。2025年度、ファーストリテイリングは問題の半分が外部環境、もう半分が自社の硬直性にあると認めた。
現在、同社は店長に経営者的な役割を求めている。店舗は現地の気温や顧客の変化に応じて商品を調整し、どのサイズ、色、カテゴリーがより売れるかを事前に判断する必要がある。本社は指示を出すだけでなく、データ、サプライチェーン、在庫システムを通じて店舗の判断を支援する立場へと転換した。
この「個店経営」への移行は、組織と人材に高い要求を課す。ユニクロ中国の成長の中核は、要件を満たす店長を十分に育成できるかどうかにかかっていると言える。
気象データと在庫管理の連携
アパレルビジネスは気温に大きく左右される。HEATTECH、ダウンジャケット、日よけウェア、AIRism、リネンには明確な季節性があり、冬の到来が数週間遅れるだけで在庫と値引きに直結する。2024年度後半、中国本土の売上減少と利益縮小の一因として、ファーストリテイリングは異常気象を挙げた。
気象データと販売データの連携は、小売テクノロジーの重要な応用分野だ。気温の変動パターンを過去の販売実績と照合し、地域ごとに適切なタイミングで商品を投入する仕組みが求められる。ユニクロは店舗の自律的判断と本社のデータ分析を組み合わせることで、在庫過剰と値引き圧力の抑制を進めている。2025年度には大中華圏の売上は6502億円(前年比4%減)に減少したが、事業利益は899億円(同12.5%減)と、利益の減少が売上を上回る状況が続いた。最新四半期での改善は、こうしたテクノロジー活用と店舗最適化の成果と評価できる。
ECと実店舗の二桁成長
ユニクロ中国のEC事業は二桁成長を維持している。実店舗の縮小と並行してオンラインチャネルが拡大していることは、オムニチャネル戦略の進展を示している。実店舗がショールーム的役割を担い、ECが購買の受け皿となる流れが加速している可能性がある。
ファーストリテイリングのグローバル展開において、中国はもはや唯一の海外成長エンジンではない。欧米や東南アジアが新たな成長拠点として台頭し、中国には安定した利益の維持が求められている。過去のような急速な拡大に戻る必要はなく、現在の成長は消費の急回復によるものではなく、赤字店舗の閉鎖による固定費削減、精緻な在庫管理による値引き抑制と粗利率向上によるものだ。
編集部の見解
短期的には、ユニクロ中国の「閉店と新規出店」戦略は他の外資アパレルブランドにも波及する可能性が高い。中国の小売市場はモールの供給過剰と消費者行動の変化に直面しており、店舗数の拡大よりも単店当たりの生産性向上が優先される局面に入った。データ分析と店舗運営の融合は、競争優位の源泉として重要性を増すと見られる。 長期的な視点では、ユニクロの事例は小売業におけるテクノロジー活用の方向性を示している。標準化されたチェーン複製から、現地適応型の「個店経営」への転換には、サプライチェーンシステムや在庫管理、人材育成のデジタル化が不可欠だ。この転換が成功すれば、他業種の小売企業にも応用可能なモデルとなる。ただし、店舗運営の自律性とブランド統一性のバランスは依然として課題であり、人材の質と量が成長の制約となる。 編集部としては、ユニクロ中国の業績回復がテクノロジー投資によるものか、それとも単なる固定費削減の結果かを注視する必要があると考えている。持続的な成長には、データ基盤への継続的な投資と現場運用の熟度向上が問われる。
参考
- 「 优衣库中国的关店式增长 」, by 涌流商业 — 虎嗅网, 2026-07-12T22:38:52.000Z (ARR)
- 元記事URL: https://www.huxiu.com/article/4874682.html?f=rss
よくある質問
- ユニクロ中国はなぜ店舗数を減らしながら売上を伸ばせたのか
- 低生産性の小規模店舗を閉鎖し、立地や面積に優れた旗艦店に経営資源を集中させた。閉店と新規出店を経た店舗の月間売上は従来の約1.5倍に達している。また、データとサプライチェーンを活用した在庫管理の精緻化により、値引きを抑制し粗利率を改善した。
- 「個店経営」とは具体的にどのような仕組みか
- 店長が現地の気温や顧客層に応じて商品構成や在庫を調整する経営者的役割を担う。本社はデータ分析やサプライチェーンシステムで店舗の判断を支援する。従来の本社主導の標準化モデルから、現場の自律性を高める方向へ転換している。
- ユニクロ中国の業績回復は持続可能か
- 現状の成長は消費の急回復によるものではなく、赤字店舗の閉鎖による固定費削減と在庫管理の改善によるものである。持続性には、要件を満たす人材の育成とデータ基盤への継続投資が不可欠であり、まだ検証の途上にある。
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