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Uber、自動運転普及を遅らせる戦略 ロビー活動の実態

Uberがニュージャージー州で提案した法案は、自動運転タクシー事業者に有人ドライバー85%の稼働を義務付ける内容。事実上の競争制限策として波紋を広げている。

7分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

Uber、自動運転普及を遅らせる戦略 ロビー活動の実態
Photo by Paul Hanaoka on Unsplash

(本記事は Wired に基づく。All Rights Reserved。)

Uber Technologiesが自動運転タクシー(robotaxi)の普及を事実上遅らせる戦略を、複数の州でのロビー活動を通じて推進している実態が、WiredのAarian Marshall記者の調査で明らかになった。

同社はかつて自動運転技術の開発を自社で進めていたが、現在は方向転換している。2015年時点で当時のCEOトラビス・カラニック氏は自動運転車を「配車ビジネスモデルにとって存続の脅威」と位置づけ、自社開発に乗り出した。しかし2020年に自動運転部門ATGを売却して以降、Uberは自ら自動運転車を運行するのではなく、人間による運転とロボットによる運転の双方を受け入れるプラットフォームとしての立ち位置を模索してきた。

現CEOダラ・コスロシャヒ氏は2024年の投資家向け説明で「世界中に多くの自動運転プレイヤーが出現すると考えている。当社はそれらすべてにとって頼りになる商業プラットフォームになりたい」と述べている。現在までにUberは25以上のロボットタクシー事業者と提携契約を結び、Waymo、Nuro、Baidu、VolkswagenのMOIAなどの無人車両が、すでにまたは間もなくUberアプリ上で利用可能になる。

ハイブリッドネットワークの法制化

今回明らかになったのは、Uberがこのプラットフォーム戦略を法制化しようとしている点だ。同社のロビイストは、「ハイブリッドネットワーク」と称する枠組みを立法府に働きかけている。これは、人間による運転とロボットによる運転が共存するシステムを指す。

特に注目されるのはニュージャージー州での動きだ。Wiredが入手した文書と公共記録請求を通じて得た情報によると、Uberのロビイストは同州の議員に立法草案を提示していた。その内容は、無人配車サービスを提供するあらゆるプラットフォームに対し、3年間にわたり全走行距離の85%を人間ドライバーが担うことを義務付けるというものだ。

この条項は事実上、Waymo、Zoox、Teslaといった自動運転車開発企業が、ニュージャージー州内で独自の配車アプリを運営することを不可能にする。これらの企業が同市場に参入するためには、競合にあたるUberのプラットフォームに依存せざるを得なくなる。同州ではUberが配車サービス市場で圧倒的なシェアを誇る。

Uberの代理人はこの提案を、州上院議員アンドリュー・ズウィッカー氏に直接提示していたと、同氏の首席補佐官アーラ・リオス氏が認めた。ズウィッカー議員は現在、ニュージャージー州の公道における自動運転車の初めてのルールを定める法案を提出しており、同法案は今秋に採決される可能性がある。Uberが提案した条項は、現時点では法案に含まれていない。

85%ルールの実質的影響

この法案が仮に成立した場合、米国の配車市場に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

第一に、WaymoやZooxなど、独自技術でrobotaxi事業を展開する企業は、ニュージャージー州への進出が事実上不可能になる。85%という高い有人走行比率の維持は、自動運転車両を主力とする企業にとって極めて困難なハードルだ。

第二に、この法案はTeslaのrobotaxi構想にも大きな制約を課す。ニュージャージー州の法案は、自動運転ソフトウェアに複数のセンサー(カメラ、LiDAR、レーダーなど)の使用を義務付けている。Teslaは現在、カメラのみに依存する「ビジョン」方式を採用しており、この要件を満たせない。さらに、非常時にステアリングホイールとブレーキペダルによる操作を可能にするよう求めているが、Zooxのような専用設計のrobotaxiはこれらを備えていない。

公共政策の専門家の間では、Uberの戦略に対する評価が分かれている。自動運転車の導入に伴う雇用問題やインフラ整備の観点から、段階的な移行を支持する声がある一方、特定の企業に有利な規制を設計する行為は競争を歪めるとの批判もある。

Uberの主張と業界の反応

Uber広報担当者はWiredに対し、同社の取り組みは「独占の防止」を目的としていると説明した。自動運転技術を独占する企業が市場を支配するのを防ぎ、複数の事業者が共存できる環境を作るためだと主張する。また、配車プラットフォームとしてのUberの立場は、消費者に選択肢を提供し、競争を促進するものだと強調した。

しかし、競合他社の見方は異なる。Waymoの広報担当者は「革新を阻害する規制ではなく、消費者の選択を尊重する政策が重要だ」とコメント。Zooxの関係者も「安全基準と競争促進のバランスが取れた規制枠組みが必要だ」と述べている。

自動運転業界全体としては、規制の明確化自体は歓迎するものの、特定のビジネスモデルに有利なルール作りには警戒感を示している。Aurora InnovationやCruiseなど、他の自動運転企業も同様の懸念を表明している。

編集部の見解

短期的に見ると、ニュージャージー州での法案可決の行方は、米国におけるrobotaxi規制の先例となる可能性が高い。Uberが同様のロビー活動を他州でも展開すれば、自動運転車の展開ペースに顕著な影響が出ると見られる。特に85%ルールのような数値基準は、技術の成熟度や地域特性を無視した一律規制として機能し、業界標準となる危険性をはらんでいる。 長期的には、今回の動きは「プラットフォーム企業が規制を競争ツールとして利用する」新たなパターンを示している。従来は技術開発競争で優位に立つ企業が市場を制覇してきたが、Uberは規制環境を自ら設計することで、技術的劣位を制度的優位に転換しようとしている。この戦略が成功すれば、他の業界でも同様の手法が模倣される可能性があり、技術革新と規制政策の関係性を根本から問い直す契機となる。 編集部としては、自動運転技術の社会実装における「公平な競争条件」の定義が、今後の政策論争の核心になると考える。Uberの主張する「ハイブリッドネットワーク」が真に消費者の利益になるのか、それとも既存事業者の保護に過ぎないのか。

参考

よくある質問

Uberはなぜ自動運転タクシーの普及を遅らせようとしているのか
Uberは自社で自動運転技術を開発する方針から撤退し、代わりに様々なrobotaxi事業者の配車プラットフォームとして機能する戦略に転換した。他社が独自の配車アプリで市場に直接参入すると、Uberのプラットフォーム価値が低下する。規制を利用して競合他社の独立した展開を制限し、自社プラットフォームへの依存を強いることで、市場支配力を維持しようとしている。
ニュージャージー州法案の85%ルールとは具体的に何か
3年間、無人配車サービスを提供するプラットフォームに対し、全走行距離の85%を人間ドライバーが担うことを義務付ける条項。これはWaymoやZooxのようなrobotaxi専業企業が単独で州内に進出することを事実上不可能にする。競合他社はUberのプラットフォームに依存せざるを得なくなる。
この法案がTeslaやZooxに与える影響は
ニュージャージー州法案は自動運転ソフトウェアに複数センサーの使用を義務付けており、カメラのみに依存するTeslaの方式は要件を満たせない。また、非常時のステアリングホイールとブレーキペダルによる操作を要求しており、これらの装備を持たないZooxの専用設計robotaxiも排除される。結果として両社の同州への展開を阻害する。
出典: Wired

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