Apple、OpenAIを営業秘密窃取で提訴——元社員関与を主張
AppleがOpenAIを連邦裁判所に提訴。元社員を含む被告が営業秘密を不正に取得・使用したと主張。両社のAIハードウェア競争が法的争いに発展。
Appleは現地時間2026年7月10日、OpenAIおよび同社のハードウェア責任者を相手取り、営業秘密の窃取を主張する連邦訴訟をカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提起した。両社がAIハードウェア事業の拡大を進める中、人材と情報をめぐる争いが法廷闘争に発展した形だ。
Tom’s HardwareのAndrew E. Freedmanの報道によれば、訴状は「OpenAIとその一味は、少なくとも一部は元Apple社員に主導され、Appleから候補者を勧誘し、Appleの機密情報に関する知識を引き出し、入社後もその知識を搾取し続けた」と主張している。Appleは「OpenAIは多様な方法でAppleの営業秘密と機密情報を不正流用した」としている。
提訴の主要当事者
被告として名前が挙がっているのは、OpenAIの技術スタッフであるChang Liu、ハードウェア責任者のTang Tan、OpenAI本体、そしてio Productsの4者だ。io Productsは、Tanが元Appleデザイン責任者のJony Ive、その後任であるEvans Hankey、元AppleデザイナーのScott Cannonと共同で設立した企業である。訴状は創業者への直接言及を避けつつも、Iveの名前はURL内で引用されている。
TanはAppleで製品デザイン担当バイスプレジデントを務め、iPhone、AirPods、Apple Watchの開発に関与していた。LiuはAppleでシニア電気エンジニアとして勤務していた経歴を持つ。
Appleの主張——勧誘から情報持ち出しまで
Appleは2025年2月にOpenAIに対して懸念を伝えたが、OpenAIは応答しなかったと訴状で主張している。AppleはTanがApple社員から秘密情報を取得しようと試みたとし、求職候補者に対して「ショーアンドテル」目的で部品を持参するよう求め、自らのAppleに関する知識を使って候補者からさらに多くの情報を引き出したと非難する。
Liuに関しては、Appleのノートパソコンを返却せず、認証バグを悪用してAppleのファイルにアクセスしたとされている。
さらにAppleは、OpenAIが入社予定者に対して退職方法を指導し、可能な限り長く在籍し、退職先を開示せず機密情報へのアクセスを継続するよう指示したと主張する。
訴状は「OpenAIのハードウェア事業は、不正流用された営業秘密への違法な依存によって根底から腐敗している」と断じている。
Appleの訴訟によれば、現在400人以上の元Apple社員がOpenAIで働いているという。
両社のAIハードウェア戦略
Appleはカメラ付きAirPods、ペンダント型デバイス、ホームロボットなど、複数のAI搭載ハードウェアプロジェクトを開発中とされる。一方、OpenAIが取り組むハードウェアについては情報が限られているが、The Informationは同社がHomePodスタイルのスマートスピーカーを開発中と報じている。
本訴訟の背景には、急速に拡大するAIハードウェア市場における熾烈な競争がある。Appleは自社のエコシステムにAI機能を統合するハードウェアを、OpenAIは独自のAIモデルを搭載したデバイスをそれぞれ目指している。
内部リンク
Appleがスマートスピーカー市場で競合する製品戦略については、Google新Home Speaker、音質で6年前のNest Audioに劣るの記事が参考になる。また、Linuxカーネルにおけるキャッシュ管理の最適化とAI関連ワークロードの高速化については、Linux Cache Aware Scheduling拡張、MySQL最大360%高速化で詳報している。
編集部の見解
短期的には、本訴訟は両社の人材採用戦略に大きな影響を与えると見られる。とりわけOpenAIはハードウェア部門の拡大において、Apple出身者を積極的に採用してきた経緯があり、訴訟の行方が採用活動の制約要因となる可能性がある。また、大手テクノロジー企業間で競合他社出身者の採用と営業秘密保護の線引きが改めて問われることになる。
長期的な視点では、AIハードウェア市場の形成そのものがこの訴訟の影響を受ける可能性がある。Appleが主張するような組織的な情報流出が事実であれば、OpenAIのハードウェア開発に遅延が生じる可能性がある。一方で、企業間の人材移動とそれに伴う知見の移転は業界では常態化しており、訴訟の勝敗にかかわらず業界全体の慣行に波及すると言えそうだ。
編集部としては、本件の最大の論点は「AIハードウェアという未開拓領域において、営業秘密保護と競争促進のバランスをどう保つか」にあると見る。Appleが主張するような「ショーアンドテル」の事実関係が立証されるか、そして裁判所が営業秘密の範囲をどの程度広く認定するかが今後の焦点となる。
参考
- 「 Apple sues OpenAI over alleged theft of trade secrets — claims company mentored incoming employees on bringing confidential information 」, by Andrew E. Freedman — Tom’s Hardware, 2026-07-10T21:59:42.000Z (ARR)
- 元記事URL: https://www.tomshardware.com/tech-industry/big-tech/apple-sues-openai-over-alleged-theft-of-trade-secrets-claims-company-mentored-incoming-employees-on-bringing-confidential-information
よくある質問
- この訴訟でAppleは何を求めているのか
- 訴状の詳細な請求内容は明らかになっていないが、営業秘密の不正流用の差し止めと損害賠償を求めていると推定される。元社員による情報持ち出しが認定されれば、OpenAIのハードウェア事業に重大な影響を与える可能性がある。
- OpenAIのハードウェア計画はどのようなものか
- 詳細は不明だが、The InformationはOpenAIがHomePodスタイルのスマートスピーカーを開発中と報じている。また、io ProductsはJony Iveら元Appleデザインチームと連携しており、AIに特化した新しいハードウェアカテゴリの創出を目指していると見られる。
- なぜ訴訟はカリフォルニア州で提起されたのか
- 両社ともカリフォルニア州に主要な拠点を持ち、同州が営業秘密保護に関する法律を整備しているため。カリフォルニア州北部地区連邦地裁はテクノロジー関連訴訟の定番の管轄であり、Appleの本社があるクパチーノも同地区に含まれる。 ## 参考 - [Apple sues OpenAI over alleged theft of trade secrets — claims company mentored incoming employees on bringing confidential information | Tom's Hardware](https://www.tomshardware.com/tech-industry/big-tech/apple-sues-openai-over-alleged-theft-of-trade-secrets-claims-company-mentored-incoming-employees-on-bringing-confidential-information) — 2026-07-10公開
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