T-Mobile、Broadcom訴訟でVMware離脱へ 30万コア移行
T-MobileがBroadcomとの訴訟を受け、303,000コア規模のVMware環境を他プラットフォームへ移行中。裁判所命令のサポート契約は8月3日までで、期限切れが迫る。
T-MobileがBroadcomとの法的争いのさなか、大規模なVMware環境の移行を進めている。SlashdotがThe Registerの報道を引用して伝えたところによれば、同社は303,000コアに及ぶVMware基盤を他のプラットフォームへ移行中であり、同時にBroadcomに対して永続ライセンス契約で保証された延長サポートを求めて法廷闘争を続けている。
裁判所が命じたサポート提供期間は2026年8月3日までとされており、The Registerは「この問題はやや緊急性が高い」と指摘する。期限が切れればT-Mobileは自社の大規模VMware環境に対するサポートを受けられなくなる可能性がある。
争点となった契約内容
本件の発端は2023年8月にT-MobileがVMwareと結んだ契約にある。この契約でT-Mobileは一部ソフトウェアの永続ライセンスと2年間のサポート、さらに1年間の追加サポートオプションを取得していた。
ところが2023年にBroadcomがVMwareを買収すると、状況は一変する。Broadcomは永続ライセンスの販売を停止し、永続ライセンス保有者向けのスタンドアロン型サポート契約も廃止した。同時に、VMwareの製品群は150以上からサブスクリプション型の2つのバンドルに削減され、現在は主にCloud Foundation(VCF)プライベートクラウドスイートが販売されている。
AT&TやTescoも同様に延長サポートの権利行使を試みたが、Broadcomはこれに応じなかった。AT&Tは秘密条件で和解している。Tescoは訴訟を継続中だ。
Broadcom側の主張はこうだ。顧客が延長サポートオプションを行使しようとしても、契約対象の製品が既に存在しないため対応できない。同社の契約条件では販売終了製品に対するサポート提供を拒否できる。そして現在ではサブスクリプションが業界標準である、と。
裁判所の差止命令とサポート費用
T-Mobileは2008年からVMware製品を利用してきた。法廷での審理において、同社の弁護士はT-MobileのVMware実装を「社内ネットワーク全体の基盤」であり、「1,000のアプリケーションが稼働する場所」と表現している。別の提出書類では、Broadcomの主張としてT-Mobileが303,000以上のCPUコアでVMwareソフトウェアを稼働させていると記されている。
裁判所の文書によれば、2024年にBroadcomはT-Mobileに対し、2025年に満了する当初2年間のサポート契約を更新しないと通知した。両社は新たな契約条件について協議を続けた。T-MobileはBroadcomに対し延長サポート提供を義務付ける差止命令を求めた。Broadcomはこれに反対し、T-Mobileが差止命令の申請を意図的に遅らせたと主張した。
ある時点でT-Mobileは2年間の追加サポートに対し2,000万ドルを提案している。T-Mobileの技術担当バイスプレジデントであるKevin Luu氏が先週提出した宣誓供述書によれば、この提案は「T-MobileがVMwareからの移行をより計画的に完了させるため」だったという。
裁判所は最終的にBroadcomに対し2025年8月以降もサポート提供を継続するよう命じる差止命令を発出した。ただしT-Mobileに対しては528万ドルの支払いと50万ドルの保証金預託を条件とした。
Broadcomは差止命令に従ってサポートを継続したが、この命令によってT-Mobileとの新たな契約機会を失ったとして損害賠償を請求した。T-Mobileは、両社が新契約について協議中であったことを理由に、この主張を退けている。
Broadcomはその後、6製品を対象とする延長サポートに対し2,400万ドルを請求したと報じられている。
移行に伴う現実的課題
T-Mobileが直面しているのは、単なるライセンス紛争ではない。303,000コアに及ぶVMware環境を別のプラットフォームへ移行するには、膨大な時間とリソースが必要となる。1000以上のアプリケーションが稼働する同基盤の移行は、数年にわたるプロジェクトになると見られる。
差止命令に基づくサポート期限である8月3日まで、残された時間は1ヶ月を切っている。仮に期限までに移行が完了しなかった場合、T-Mobileはサポートがない状態で大規模な仮想化環境を運用するリスクを負うことになる。
BroadcomによるVMware戦略の業界への影響
BroadcomによるVMware買収後の方針転換は、多くの大手顧客に影響を及ぼしている。永続ライセンスの廃止とサブスクリプションモデルへの一本化は、長期的なIT投資計画を前提としてきた企業にとって大きな変更だ。
特に通信事業者は、ネットワーク基盤の中核にVMwareを採用しているケースが多い。T-Mobileのように基幹システムとしてVMwareを利用している企業にとって、移行は技術的にもビジネス的にも容易ではない。
AT&Tが秘密条件で和解したこと、Tescoが訴訟を継続していることからも、各社の対応は分かれている。T-Mobileのケースは、Broadcomの新戦略に抵抗する最も大規模な事例の一つといえる。
仮想化市場では、NutanixやMicrosoft Azure Stack HCI、オープンソースのKVMやProxmox VEなど、VMwareからの移行先となり得る選択肢が複数存在する。T-Mobileがどのプラットフォームを選定したかは現時点では明らかにされていない。
編集部の見解
短期的に注視すべきは8月3日のサポート契約期限である。T-Mobileが期限内に移行を完了できない場合、サポートなしでの運用か、何らかの暫定合意が必要となる。Broadcom側も訴訟リスクを抱えながら新契約を模索している状況で、最終盤での和解可能性もゼロではない。他社への波及効果として、同様の契約条件でBroadcomと対峙している企業が、T-Mobileの判決を参照しながら自社の交渉戦略を再検討する動きが出てくるだろう。 長期的視点では、BroadcomのVMware戦略が企業の仮想化投資に構造的な変化をもたらす可能性がある。永続ライセンスからサブスクリプションへの移行は、コスト構造の見直しを迫るだけでなく、ベンダー依存度の再評価を促す。今回の訴訟は、大規模顧客が法的救済を通じてでも既存条件を守ろうとする意思を示した点で重要だ。Nutanixやオープンソース系への移行需要は今後さらに高まる可能性がある。 編集部として問いたいのは、Broadcomの事業戦略が業界標準として定着するのか、それとも大規模顧客の反発が新たな市場構造を生み出すのかという点だ。
参考
- Slashdot: T-Mobile Appears To Be Quitting VMware Amid Support Rights Lawsuit With Broadcom — 2026-07-01公開
- [The Register: 元記事](Slashdot内で引用)
よくある質問
- T-MobileがVMware環境を移行する理由は何か
- BroadcomがVMware買収後に永続ライセンスとスタンドアロンサポートを廃止したため。T-Mobileは契約で保証された延長サポートを求めて訴訟中だが、裁判所命令のサポート期間が2026年8月3日までと迫っており、移行を余儀なくされている。
- Broadcomの主張の根拠は何か
- Broadcomは、契約対象製品が既に販売終了しているためサポート提供が不可能であり、契約条件で終了製品のサポート拒否が認められていると主張する。また、現在はサブスクリプションモデルが業界標準であり、T-Mobileは新たなサブスクリプション契約を結ぶべきだと考えている。
- この訴訟の業界への影響は
- 永続ライセンスからサブスクリプションへの移行に伴う法的限界を問う重要な事例となる。他の大規模VMware顧客も同様の契約条件でBroadcomと交渉中であり、T-Mobileの訴訟結果が業界全体の仮想化投資戦略に影響を与える可能性がある。
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