中国、AI照準の携帯型対ドローレーザー公開
中国の防衛企業Harbin Xinguangがバックパックサイズの対ドローン用レーザー兵器「Lijian II/III」を公開。重量25kg、射程500m、AI照準機能を搭載し、約200万元で供給される。
中国の防衛機器サプライヤーであるHarbin Xinguang Optic-Electronics Technology(ハルビン新光光電技術)は、2026年6月16日に開幕した北京の防衛情報機器・技術展示会において、2種類の携帯型対ドローン用レーザー兵器を展示した。Tom’s Hardwareの報道によれば、これらの兵器は「Lijian II」および「Lijian III」と命名されている。従来、対ドローン用の指向性エネルギー兵器は車載や据え置き型が主流だったが、今回公開されたモデルはバックパックに収まるサイズで、単独の兵士が携行可能な点が最大の特徴である。
技術仕様の詳細
South China Morning Post(SCMP)の報道に基づけば、Lijian IIの重量は30kg(約66ポンド)、Lijian IIIは25kg(約55ポンド)である。消費電力は約2kWで、射程は約500メートル(1,640フィート)とされる。価格は1基あたり約200万元(約29.5万米ドル)である。
各携帯型ユニットは、レーザー発振器、空冷システム、ハンドヘルド制御端末の3つのコンポーネントに分割可能で、1人から2人の兵士で運搬できる設計となっている。発振器の重量は約15kg、冷却システムは約10kgである。両モデルとも俯仰角は90度以上で、上空のドローンを迎撃可能だ。Lijian IIIはドローンを4秒で貫通し、再射撃まで5秒未満の冷却時間で済むと同社は説明している。
同じシリーズには固定型モデル「Lijian-10G」も存在する。同モデルは消費電力10kW、射程1,200メートル(3,900フィート)を達成するが、大型の液体冷却装置を必要とするためバックパックには収まらない。Harbin Xinguangは携帯型について「操作が容易で、迅速な展開と回収が可能」とコメントしている。
競合システムとの比較
携帯型であるという利点は、当然ながら出力の制約と引き換えである。2kW級のLijianシリーズは、中国がマレーシアのDSA 2026で展示した3kW級の対ドローンシステム「NI-L3K」よりも低出力であり、諸外国の高出力システムと比較すればさらに差がある。米陸軍は現在、Oshkosh JLTV車両に搭載する20kW級のLOCUSTシステムを試験中であり、イスラエルの100kW級Iron Beamは昨年後半に初めて実戦配備された高出力レーザーとなった。携帯性を重視した本システムは、長距離目標に対する火力よりも、近距離での機動的な運用を優先した設計と言える。
2kWの出力は、小型で低空を低速飛行するドローン(いわゆるロー・スロー・スモールターゲット)に適している。1発あたりのコストで見れば、レーザーはエネルギー消費のみで済むため、数万ドルにも達する携行式ミサイルと比較して圧倒的に有利である。同社の担当者Zhao氏は、コア技術の成熟は2023年に達しており、ウクライナ戦争がドローン戦争の思想を変革した時期と一致すると述べている。
AI照準機能と倫理
本システムが特に注目を集めるのは、AIによる目標識別機能である。Lijianシリーズは、外部センサー(レーダーなど)からの情報を基に、AIが目標を識別し、射程内に入ったドローンに対して自動でレーザーを発射する。Harbin Xinguangは、これらの兵器がすでに中国国内の一部施設(軍事空港を含む)に配備されており、展示会を通じてさらなる受注を目指していると述べた。
AIが自律的に目標を識別・攻撃する機能は、誤認や巻き添え被害のリスクをはらむ。特に市街地や民間施設付近での運用では、厳格な判断基準と人間の監視が求められる。中国企業がこのような自律型致死兵器システム(LAWS)に近い技術を実用化しつつあることは、国際的な規制議論に新たな火種を投じる可能性がある。技術的には興味深いが、制御不能な自律攻撃のリスクは無視できない。
今後の展開
現在の仕様ではバッテリー持続時間や冷却システムの詳細は明らかにされていない。携帯型レーザー兵器の最大の課題は、限られた電力と熱管理にあり、戦場での連続運用にはさらなる改良が必要とされる。しかし、2kW級という出力は小型ドローン対策として実用的な水準に達しており、コストパフォーマンスの面で従来の対空兵器を凌駕する可能性がある。特に、低コストのFPVドローンが戦場で大量に使用される現代の紛争において、このような携帯型レーザーは有力な対抗手段となり得る。
編集部の見解
短期的には、本システムの配備が中国国内の重要施設(空港や軍事基地)の防空能力を向上させることが予想される。2kW級の出力では高速ジェット機や大型ドローンへの対処は困難だが、FPVドローンや小型クアッドコプターなど、現代の戦場で急増する低コスト無人機への対抗手段として、コスト効率の高い選択肢になる。弾薬費と比較してレーザーの1発あたりのコストがほぼ無視できる点は、長期の防衛運用において大きな魅力である。特に中東や東欧の紛争地帯で、携行型ミサイルの高コストが問題視されている現状を踏まえれば、この技術の実用化は需要を喚起する可能性がある。 長期的視点では、携帯型指向性エネルギー兵器が一般化する可能性がある。現在のレーザー兵器は出力と重量のトレードオフが大きいが、バッテリー技術や冷却システムの進歩により、今後さらに小型化と高出力化が進むと見られる。また、本システムがAIによる自律照準を備えたことは、軍事用AIの倫理的な課題を再浮上させる。国連でのLAWS規制協議が停滞する中、このような兵器の実戦配備は国際社会に新たな圧力をかけるだろう。
参考
- Tom’s Hardware: China unveils man-portable anti-drone laser that can burn through a drone 1,600 feet away in four seconds — backpack-sized 2-kilowatt weapon uses AI for targeting, weighs 55 pounds, and can be carried by a single soldier (https://www.tomshardware.com/tech-industry/china-shows-off-a-backpack-sized-anti-drone-laser-that-one-soldier-can-carry) — 2026-06-20公開
よくある質問
- Lijian IIとLijian IIIの違いは何か?
- Lijian IIの重量は30kg、Lijian IIIは25kgと、IIIの方が軽量である。また、Lijian IIIはドローンを4秒で貫通し、再射撃までの冷却時間が5秒未満と発表されている。価格はいずれも約200万元でほぼ同等である。
- このレーザー兵器の射程はどれくらいか?
- 公式スペックでは約500メートル(1,640フィート)とされている。固定型のLijian-10Gでは1,200メートルまで延伸するが、携帯型では出力2kWの制約からこの射程となる。
- AIによる目標識別はどのように機能するのか?
- 外部のレーダーなどのセンサー情報を受け、AIが飛来するドローンを識別・追尾し、射程内に入った時点で自動的にレーザーを発射する。これにより操作者の反応時間を短縮できるが、自律的な判断による誤認リスクも指摘されている。
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