米陸軍、Vampire対ドローンシステムを採用
米陸軍がL3HarrisのVampire対ドローンシステムを最大1億600万ドルで契約。トラック搭載型のレーザー誘導ロケットでUAVを6km先から撃墜可能。
米陸軍は、L3Harris社が開発した対ドローンシステム「Vampire」の調達契約を締結した。The Registerの報道によれば、契約額は最大1億600万ドル(約170億円)に達し、部隊防衛の多層的ドローン対策の一翼を担う。ウクライナ戦争で実戦投入されたこのシステムは、レーザー誘導ロケットを用いて小型無人機を撃墜する低コストな手段として注目されている。
システムの仕組み
Vampireは完全自己完結型のプラットフォームであり、トラックの荷台に搭載可能な設計が特徴だ。伸縮式マストに電気光学/赤外線(EO/IR)安定化照準システムを統合し、目標の捕捉・追尾を行う。兵装にはAdvanced Precision Kill Weapon System(APKWS)を採用。これは米国製Hydra 70口径2.75インチ(70mm)ロケットにレーザー誘導能力を追加したもので、比較的安価な対ドローン弾薬として定着しつつある。同ロケットは既に英空軍のタイフーン戦闘機にも搭載され、中東での対ドローン任務に投入されている。
最大射程は約6km(3.8マイル)。レーザー照準器が目標を照射し、他のプラットフォームと連携して分散型の交戦を可能にする設計だ。L3Harrisによれば、モジュラープラグイン設計により、他のセンサーやエフェクター、無線管理システムを迅速に追加できるという。
契約の背景
米陸軍はドローンの脅威に対応するため、多層防御アプローチを採用している。Vampireはその一層を担う。L3HarrisのTargeting & Sensor Systems部門プレジデント、トム・カークランド氏は「新たな対UxS(無人システム対抗)システムを迅速に組み立て、配備、設置、射撃できるよう陸軍と協力してきた」と述べている。
Vampireはウクライナ戦争の初期段階で、ロシア製ドローンの脅威に対抗する低コストな手段として開発された。現在はアラバマ州ハンツビルに新設された生産ラインで増産が進んでおり、米国と同盟国の需要拡大に対応している。L3Harrisは契約で供給されるシステムの詳細な基数を明らかにしていない。
戦場のドローン脅威
現代戦において、民生用ドローンを改造した偵察・攻撃機や、自律型無人航空機(UAV)の脅威は極めて深刻化している。ウクライナ戦争ではFPVドローンによる戦車破壊、中東ではクルーズミッション型の自爆ドローン攻撃が相次いで報告された。従来の地対空ミサイルシステムではコスト面で割に合わず、レーザー兵器や電子戦装備と併用する形で、低コストなキネティック手段が求められている。
Vampireはこのギャップを埋める存在だ。APKWSロケット1発の単価は数万ドルとされ、数十万ドル以上する地対空ミサイルに比べて圧倒的に安い。また、トラック搭載により高い機動性を持ち、前線の即応部隊が迅速に展開できる。
編集部の見解
短期的には、本契約によりNATO加盟国を中心に同様の対ドローンシステムの導入が加速する可能性がある。Vampireの生産能力増強は、ウクライナ向け供与も視野に入れたものと見られ、今後の対ドローン装備の標準化につながるかもしれない。特にAPKWSロケットは既に米軍で広く運用されており、訓練や兵站面での優位性は大きい。
長期的視点では、自律型ドローンの急速な進化に対し、キネティックな迎撃手段がコスト競争にどこまで耐えられるかが問われる。FPVドローンが1台数百ドルで量産される時代、数万ドルのロケットで撃墜するモデルは持続可能性に課題を残す。電子戦やレーザー兵器、ネット封じ込めなど非キネティック手段との組み合わせが今後不可欠になると編集部では評価する。
編集部からの問いとして、低コストなドローンと高価な迎撃手段の非対称性が、軍事作戦のコスト構造を根本的に変えつつある点を指摘したい。この流れは民生分野でのドローン規制や対ドローン技術の市場拡大にも波及するだろう。読者には、安価なUAVがもたらす安全保障上のパラダイムシフトについて考えを深めていただきたい。
参考
- US Army picks out Vampire to fill a gap in its layered drone defenses - The Register — 2026-06-14公開
- ウクライナ、AI自律ドローンで初の殺害 — ドローン攻撃の実態に関する当サイトの関連記事
よくある質問
- Vampireシステムの射程はどのくらいか
- 最大約6km(3.8マイル)の距離にある航空目標を攻撃可能。レーザー誘導ロケットAPKWSを使用し、6km以内のドローンや遠隔操縦航空機を狙う。
- なぜ米陸軍はVampireを導入するのか
- 民生品ベースの安価なドローンが増加し、従来の地対空ミサイルではコスト効率が悪いため。VampireはAPKWSロケットを用いることで低コストな対ドローン手段を提供し、部隊防御の多層化に貢献する。
- Vampireはどのように運用されるのか
- トラックの荷台に搭載可能な自己完結型システムで、伸縮式マストにEO/IRセンサーとレーザー照準器を備える。他のプラットフォームと連携した分散交戦も可能で、前線部隊が迅速に展開・射撃できる。
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