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DJIとInsta360、vlogカメラ特許訴訟に発展

DJIがInsta360を特許侵害で提訴、Insta360も反訴。Osmo Pocket 3とLuna Ultraを巡る法廷闘争の背景と影響を解説。

9分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

DJIとInsta360、vlogカメラ特許訴訟に発展
Photo by Tingey Injury Law Firm on Unsplash

DJIとInsta360が、自撮り安定化カメラを巡る特許侵害訴訟に突入した。DJIは2026年6月11日、Insta360の最新モデル「Luna Ultra」が自社のOsmo Pocket 3のデザイン特許2件と実用特許4件を侵害しているとして、米国で提訴。これに対しInsta360は即座に反訴し、DJIが自社のジンバル・手ブレ補正関連の特許5件を侵害していると主張している。PetaPixelが報じた内容を基に、本稿では両社の主張と訴訟の背景を整理する。

DJIが提起した訴訟は、まず意匠権に関するものだ。Luna Ultraの筐体デザイン、ボディとジンバルアームを接続するネック部、スクロールホイールと録画ボタン、回転式ディスプレイといった要素がOsmo Pocketシリーズのデザイン特許を侵害していると主張する。別途提起した実用特許訴訟では、同社が開発したジンバル追尾技術の一部がLuna Ultraに不正に流用されたと指摘している。

DJIは、恒久的差止命令によるLuna Ultraの販売禁止に加え、「合理的なロイヤルティを下回らない」損害賠償、Insta360がこれまでにLuna Ultraで得た収益の吐き出し(profit disgorgement)、および故意の侵害を理由とした追加的損害賠償を求めている。

一方、Insta360の反訴はより広範だ。同社はDJIのOsmo Pocketシリーズに加え、Roninシリーズ、Osmo Mobileシリーズ、Osmo 360といった製品群が、Insta360の「ジンバル安定化、ジンバル方向制御、カメラの滑らかな安定化、テレメトリーオーバーレイ、パノラマ動画安定化」に関する特許を侵害していると主張する。さらにInsta360は、Luna Ultraの中核技術は同社のLinkシリーズWebカメラやFlowシリーズジンバルに遡るものであり、DJIによる侵害主張には根拠がないと反論する。

Engadgetが両社にコメントを求めたところ、現時点で回答は得られていない。

訴訟が示す戦略的意味合い

両社の法的攻防は、単なる特許紛争を超えた市場戦略の側面を持つ。特に注目すべきは、DJIが米国市場で置かれた立場だ。2025年12月、連邦通信委員会(FCC)はDJIを「Covered List」(対象リスト)に追加。これによりDJIは、新たな外国製ドローンやカメラを米国内で販売することが事実上禁止された。

DJIはこの規制を回避するため、新ブランド「Xtra」を立ち上げてOsmo Pocket 4を販売している。同社がInsta360に対して恒久的差止命令を求める背景には、自社の販売制限を補う形でInsta360の市場シェア拡大を食い止めたい思惑があると見られる。もし裁判所がLuna Ultraの販売を禁止すれば、DJIとInsta360は米国市場で「どちらも新品を売れない」という均衡状態に持ち込める。これはDJIにとって、訴訟提起の主要な動機の一つと評価できる。

Insta360にとっては、成長著しいvlogカメラ市場で先行するLuna Ultraの販売を阻止されるリスクは極めて大きい。Xtraブランドを通じて販売網を維持するDJIに比べ、Insta360はFCC規制の適用を受けていないため、米国市場で自由に販売できる立場にある。この非対称性を解消するため、DJIは法的手段に訴えたと推測される。

技術的な論点の核心

DJIが主張する実用特許の中核は、ジンバル搭載カメラにおける「追尾技術」だ。Osmo Pocket 3で実装された顔・物体追尾アルゴリズムは、ハードウェアとソフトウェアの協調によって実現されており、特許の網羅範囲は広い。Insta360のLuna Ultraが同様の機能を提供している点は争点となり得る。

Insta360が反訴で挙げた「ジンバル安定化」「パノラマ動画安定化」などは、同社がFlowシリーズやLinkシリーズで長年にわたり蓄積してきた技術だ。DJIのOsmo製品群が、これらの特許を侵害しているかどうかは、専門家によるクレーム解釈と製品解析が鍵となる。

両社ともドローンやアクションカメラで積み上げた特許ポートフォリオを持つ。今回の訴訟は、そのうちvlogカメラという新たな製品カテゴリーで熾烈な衝突が起きた形だ。特許の有効性や侵害の有無は今後数ヶ月から数年かけて審理されることになる。

FCC規制がもたらす非対称性

DJIがFCCのCovered Listに指定された経緯は、国家安全保障上の懸念に基づく。同社のドローンが米国政府機関や軍事施設周辺で使用されるリスクが問題視され、2020年以降段階的に規制が強化されてきた。2025年にはカメラ製品も対象に含まれる形でCovered Listが拡大された。

これにより、DJIは新モデルを米国で発売するたびにXtraのような別ブランドを用意するなど、迂回策を迫られている。こうした状況下で、Insta360に対する特許訴訟は、販売チャネルを拡大できないもどかしさを法的な攻勢で補う動きと解釈できる。

もっとも、Xtraブランドによる販売が法的にどの程度有効かは不透明だ。FCCの規制を形式上回避できたとしても、今後さらなる規制強化や関税措置が取られる可能性もある。DJIにとっては、米国市場での影響力を維持するためにも、Insta360をけん制する必要性は高い。

業界への影響と今後の展開

vlogカメラ市場はここ数年で急成長している。Osmo Pocketシリーズはその先駆け的存在であり、Insta360もLuna Ultraで対抗してきた。両社の訴訟は、この市場の主導権争いを法的な舞台に持ち込んだと言える。

特許訴訟の行方は、製品の改良方向や新モデルの投入タイミングにも影響を与えるだろう。仮にDJIが差止めを獲得すれば、Insta360はLuna Ultraの大幅な設計変更を余儀なくされる。逆にInsta360がDJIの特許無効や非侵害を勝ち取れば、同社の製品ロードマップに追い風となる。

和解の可能性も排除できない。両社とも訴訟費用と時間を考慮すれば、ライセンス契約やクロスライセンスで決着する可能性はある。ただ、今回双方とも強硬な姿勢を示しており、少なくとも予備的差止め申請の段階までは法廷で争う公算が大きい。

編集部の見解

短期的には、今回の訴訟がInsta360のLuna Ultra販売に冷や水を浴びせる可能性がある。特にDJIが恒久的差止めを求める訴訟の初期段階で予備的差止めが認められれば、Insta360は米国市場で一時的に売れなくなるリスクを抱える。一方で、DJI自身もFCC規制で新品販売が制限されているため、訴訟結果にかかわらず米国市場でのプレゼンス回復は容易ではない。

長期的視点では、本件はvlogカメラ市場の標準技術を巡る先駆者争いの様相を呈している。ジンバル安定化技術はスマートフォン用アクセサリーやロボットカメラにも応用可能であり、特許の価値は単一製品に留まらない。両社が保有する特許ポートフォリオの強みが、今後の市場ポジションを左右する可能性が高い。

編集部として注目すべき問いは、FCC規制下にあるDJIが米国市場でどの程度の影響力を維持できるかだ。Xtraブランドによる回避策がどこまで有効か、また訴訟によるInsta360けん制が奏功するかどうか。さらに、こうした特許訴訟がvlogカメラの価格や製品イノベーションの速度に与える影響について、引き続き注視する必要がある。

参考

よくある質問

DJIはなぜ特許訴訟を起こしたのか?
DJIはInsta360のLuna Ultraが自社のOsmo Pocket 3のデザイン特許2件と実用特許4件を侵害していると主張。同時に、FCC規制で米国市場での新品販売が制限される中、競合の販売を法的に阻止したい戦略意図もある。
Insta360の反訴の内容は?
Insta360はDJIが自社のジンバル安定化、方向制御、手ブレ補正、テレメトリーオーバーレイ、パノラマ動画安定化に関する特許5件を侵害していると主張。DJIのOsmo Pocketシリーズ、Ronin、Osmo Mobile、Osmo 360が対象。
この訴訟が市場に与える影響は?
仮にDJIが差止命令を取得すればInsta360のLuna Ultra販売に支障が出る。逆にInsta360が勝てばDJI製品の設計変更が必要になる可能性がある。両社ともvlogカメラ市場の主導権を握るため、裁判の行方が製品開発や市場競争に直接影響する。
出典: Engadget

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