Snowflake Summit 2026、出展9社BIツールを徹底比較
Snowflake Summit 2026で9社のBIベンダーが出展。Sigma、ThoughtSpot、Qlikなど各製品の特徴とTableauからの移行トレンドをレポート。
2026年6月1日から4日までサンフランシスコで開催されたSnowflake Summit 2026。クラウドデータプラットフォームSnowflakeが主催する世界最大級のデータカンファレンスで、本年も多くのベンダーがブースを構えた。特に注目されたのは、Expo会場にBI(ビジネスインテリジェンス)ベンダーが9社も出展していた点だ。
Finatext傘下のナウキャストでコンサルタントを務める寺西氏が各ブースを回り、担当者から直接得た一次情報をZennに投稿した。本稿ではその内容をもとに、各製品の特徴と選定のポイントを整理する。
出展9社の製品とスポンサーランク
Snowflake Summit 2026で出展したBIベンダーは以下の9社である。スポンサーランクは上位から「Heli-Ski」「Double Black Diamond」「Black Diamond」「Blue Square」「Snow Row」の順に並ぶ。
| 製品 | カテゴリ | 主な競合 | スポンサーランク |
|---|---|---|---|
| Sigma | Spreadsheet BI | Tableau, Power BI | Heli-Ski(メインスポンサー) |
| Domo | All-in-One BI | Power BI, Tableau | Double Black Diamond |
| ThoughtSpot | AI Search Analytics | Sigma, Tableau AI | Double Black Diamond |
| Qlik | BI + Data Integration | Tableau, Power BI | Black Diamond |
| Omni Analytics | Semantic Layer BI | Looker | Blue Square |
| Astrato | Analytics Headless BI | Tableau, Sigma | Snow Row |
| Euno | KPI/Finance Analytics | Metric Insights | Snow Row |
| insightsoftware(Simba) | レポーティング・FP&A | IBM Cognos, SAP BO | Snow Row |
| Metric Insights | KPI監視・Push型BI | ThoughtSpot Monitor | Snow Row |
表から分かる通り、同じ「BI」と一言でくくっても、各製品の立ち位置は大きく異なる。レポート作成・ダッシュボード可視化を主目的とするものもあれば、AI検索分析やKPI監視に特化したものもある。この違いを把握することが、適切な製品選定の第一歩となる。
第三者評価と注目すべきトレンド
Gartner Magic Quadrant 2025における位置づけも確認しておきたい。同レポートはIT調査会社Gartnerが「実行能力」と「ビジョンの完全性」の2軸で製品を評価するもので、今回の出展製品では以下のように分類されている。
- Leaders(リーダー): Qlik(15年連続)、ThoughtSpot
- Challengers(チャレンジャー): Domo
- Niche Players(ニッチプレイヤー): Sigma
- 評価対象外: Omni、Astrato、Euno、insightsoftware、Metric Insights
評価対象外の製品は劣っているわけではない。新興製品や特化型製品は、Gartnerの評価フレームワークの対象となっていないだけだ。特にOmni、Astrato、Eunoは、それぞれセマンティックレイヤーやヘッドレスBI、KPI分析といった特定領域に強みを持つ。
Sigma - 最上位スポンサーとして存在感
SigmaはSnowflake Summit 2026において、最上位のHeli-Skiスポンサーとして唯一のメインスポンサーを務めた。これはSnowflakeとSigmaの緊密な関係性を示すものと言える。
Sigmaの最大の特徴はExcelライクな操作感だ。SQLを書かなくても、スプレッドシートの感覚でSnowflake上のデータを直接分析できる。具体的には、Googleスプレッドシートのように関数を入れて計算でき、元の定義したカラムを使って新しいテーブルを作成することも可能。グラフ作成も直感的に行える。
ブースでは、TableauからSigmaへのマイグレーションデモが披露された。Sigmaの担当者によると、Tableau上で稼働しているダッシュボードをSigmaに移行するニーズが増えているという。デモではClaude CodeとMCP(Model Context Protocol)を利用した自動移行が紹介されており、ワークフローは3フェーズ構成だった。Phase 1ではTableau MCPまたはPAT/APIモードでダッシュボード構造を発見し、Phase 2でデータモデルを構築(スキップ可能)、Phase 3でワークブックを生成する。シンプルなダッシュボードであれば、データソースとワークブックあたり約5〜10分で移行が完了するとの説明だった。ただし、複雑なカスタムクエリや独自のデータ加工ロジックが含まれるワークブックでは、手動調整が必要になるケースもある。
もう一つ注目すべき点は、セマンティックレイヤーの共有機能だ。Sigmaで定義した指標定義をSnowflake側に持っていき、他のツールからも参照可能にできる。データだけでなくビジネスロジックもSnowflake側で一元管理できるという点は、大規模組織でのデータガバナンスを考える上で重要な要素となる。
ThoughtSpotとQlik - AI検索とデータ統合
ThoughtSpotはAIベースの検索分析に特化した製品だ。ユーザーが自然言語で質問すると、AIが自動的にクエリを生成し、適切な可視化を提供する。Double Black Diamondスポンサーとしての出展であり、Gartner MQでもリーダーに位置づけられている。従来のBIツールに比べ、ユーザーがSQLを記述する必要がなく、直感的なデータ探索が可能だ。
Qlikは15年連続でGartner MQリーダーの評価を受ける老舗。BI機能に加えてデータ統合機能を内蔵しており、ETL(抽出・変換・読み込み)と分析を一貫して実行できる点が強みだ。Qlik独自のアソシエーションエンジンにより、複数テーブルを横断したアドホック分析が得意とされる。
新興プレイヤーとニッチ製品
DomoはAll-in-One BIとして、ダッシュボードからアプリケーション開発までを1つのプラットフォームで提供する。Gartner MQではChallengerに位置づけられており、大規模組織向けのワークフロー統合に強みを持つ。
Omni Analyticsはセマンティックレイヤーに特化したBIツールだ。Lookerのように、ビジネスロジックを一元的に定義し、複数のBIツールから参照できるアーキテクチャを採用する。データエンジニアリングチームとビジネスユーザーの間の橋渡し役として機能する。
AstratoはヘッドレスBIアーキテクチャを採用する新興製品。フロントエンドの可視化レイヤーとバックエンドのデータモデリングを分離することで、柔軟な分析環境を実現する。
EunoはKPI分析と財務分析に特化したツールだ。従来のようなドリルダウン型の分析ではなく、経営指標のモニタリングとアラートに特化している。insightsoftware(Simba)はレポーティングとFP&A(財務計画・分析)向けで、IBM CognosやSAP BusinessObjectsからの移行先として検討されることが多い。Metric InsightsはKPI監視に特化したPush型BIで、異常値を検知した際にメールやSlackに通知する機能が特徴だ。
選定のポイントと今後の展望
同じBIツールでも、用途によって適した製品は大きく異なる。ダッシュボード作成とアドホック分析が中心ならSigmaやTableau、自然言語によるデータ探索を重視するならThoughtSpot、データ統合から分析まで一貫して行いたいならQlik、経営指標のモニタリングが主目的ならEunoやMetric Insightsといった具合だ。
Snowflake Summit 2026全体を通じて感じられたのは、AIの統合がBIツールの競争軸として急速に重要性を増しているという点だ。ThoughtSpotのAI検索はもちろん、SigmaのTableauマイグレーションにClaude Codeが使われているのも象徴的だ。AIエージェントがデータ分析のワークフローに組み込まれつつある状況は、ちょうどMicrosoft Build 2026で示された自社AIモデル戦略とも共通する方向性と言える。
また、セマンティックレイヤーの共有によるデータガバナンスの強化も重要なトレンドだ。Sigmaが示したSnowflake上でのビジネスロジック一元管理は、データメッシュやデータファブリックといったアーキテクチャへの関心の高まりを反映している。
編集部の見解
短期的には、SnowflakeエコシステムにおけるBIツールの競争がさらに激化すると見られる。Sigmaがメインスポンサーとして存在感を強める一方、ThoughtSpotやQlikもAI機能で対抗する。Tableauからの移行需要が増えているというSigmaの報告は、市場の地殻変動を示している可能性がある。特に、Snowflakeネイティブで動作するBIツールへのシフトは、今後3〜6ヶ月でさらに加速するだろう。大規模組織でTableauのライセンス更新時期を迎える企業が、移行の検討を本格化させると予想される。
長期的視点では、BIツールの役割そのものが変化する可能性がある。従来は「データを見える化するツール」だったが、AIの統合により「データからインサイトを自動生成するツール」へと進化する。これにより、データサイエンティストやアナリストだけでなく、ビジネスユーザーが直接データを活用する機会が増える。一方で、AIが生成した分析結果の正確性やバイアスをどう評価するかという新たな課題も浮上する。1〜3年のスパンでは、セマンティックレイヤーを中核としたデータ管理の標準化が進み、BIツール間の相互運用性が高まると見られる。
編集部としては、今回のレポートで興味深いのは「評価対象外」の製品群だ。Gartner MQで評価されていないがゆえに注目度は低いものの、EunoのKPI特化やAstratoのヘッドレスBIアーキテクチャは、従来のBIツールではカバーしきれないニッチな領域を狙っている。これらの製品が今後、どのように市場でのポジションを確立するのか、注視する価値がある。また、AIエージェントを用いた自動マイグレーションの精度がどの程度実用的なのか、実際に移行を試みた企業の事例が待たれるところだ。
参考
よくある質問
- Sigmaの最大の特徴は何ですか
- Excelライクな操作感で、SQLを書かずにスプレッドシート感覚でSnowflake上のデータを直接分析できる点です。関数による計算やテーブル作成、グラフ作成も直感的に行えます。
- TableauからSigmaへの移行はどのくらいの時間がかかりますか
- シンプルなダッシュボードの場合、データソースとワークブックあたり約5〜10分で自動移行が完了すると報告されています。ただし、複雑なカスタムクエリや独自のデータ加工ロジックが含まれる場合は、手動調整が必要になるケースがあります。
- Gartner Magic Quadrantで評価対象外の製品は劣っているのですか
- そうではありません。新興製品や特定領域に特化した製品は、Gartnerの評価フレームワークの対象外となっているだけです。Omni AnalyticsやAstrato、EunoなどはそれぞれセマンティックレイヤーやヘッドレスBI、KPI分析といった領域で強みを持ちます。
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