Baidu系AIチップ企業、香港と上海の同時上場へ
百Baidu傘下のAIチップ企業、昆侖芯(Kunlun Core)が香港と上海の科学技術革新委員会(科創板)への同時上場を準備。親会社からの独立性強化と、国産AIチップ競争の激化を象徴する動きだ。
百Baidu傘下のAIチップ企業、資本市場での独立へ動き出す
Baidu(Baidu)が長年育んできたAIチップ事業が、資本市場での本格的な独立に向けて動き出した。Baidu傘下の半導体企業、昆侖芯(Kunlun Core)は2026年5月7日、上海の科学技術革新委員会(科創板)上場に向けた準備を正式に開始したことを明らかにした。これに先立ち、同社は2026年1月には香港取引所メインボードへの上場申請も行っており、いわゆる「A+H」デュアル上場戦略を並行して推進している。
準備機関は中国国際金融株式会社(中金公司)が務める。届出情報によれば、昆侖芯の筆頭株主はBaidu(中国)有限公司で、持株比率は57.67%に達する。香港取引所は既にBaiduによる事業分離を承認済みであり、分離後も昆侖芯は引き続きBaiduの子会社となる見通しだ。
10年間の内部開発を経て、外部市場へ本格参入
Baiduが自社チップ開発に乗り出した背景には、初期のAIコンピューティングにおけるコスト削減と、将来のボトルネックへの対応という思惑があった。Baidu創業者の李彦宏氏は、他社チップが高価だったため自社開発に踏み切り、コストを大幅に引き下げたと語っている。
Baiduは2011年にFPGAベースのAIアクセラレータープロジェクトを開始し、2018年に第1世代Kunlunチップを発表、2020年に量産に入った。プロジェクト開始から量産まで約10年を要した長期開発であった。2021年4月にはBaiduから分離し、評価額130億元で最初の独立資金調達を完了。CPE源峰、IDGキャピタル、君聯資本、元禾璞華が投資した。
しかし、AI大モデルブームが到来する前の時期は市場機会が限られ、同社の動向は長期間にわたり沈黙していた。転機が訪れたのは2023年、大モデルの普及に伴いコンピューティング需要が急増し、NVIDIA GPUの供給が逼迫した頃だ。
中国移動からの大型受注を勝ち取り、独立性を証明
昆侖芯の成長を象徴する出来事が、2025年8月の中国移動(China Mobile)からの大型受注だ。同社の調達プロジェクトで3つの入札パッケージすべて首位を獲得し、十億単位の受注を勝ち取った。顧客であった中国移動傘下の中移和創は株主名簿に加わった。この受注は、昆侖芯がBaidu内部の需要に依存しない独立した供給先を獲得したことを示す象徴的イベントと位置づけられている。
2025年7月のシリーズD資金調達時には評価額210億元に達し、株主は44社に拡大。国有資本プラットフォーム、産業巨人、金融機関が名を連ねる布陣となった。
市場での位置づけ:Huaweiを避け、NVIDIAと対峙する戦略
IDCのデータによれば、2024年中国のアクセラレーテッドコンピューティングチップ市場で、NVIDIAは190万枚、Huawei Ascendは64万枚を出荷した。昆侖芯は6.9万枚で、天数智芯(3.8万枚)、Cambricon(2.6万枚)、MooreThreads(2.4万枚)に先んじ、国内第2グループの先頭に位置する。
同社の製品ポートフォリオはAI推論チップが中心で、学習分野での存在感は比較的薄い。これはHuawei Ascendが学習に強みを持つことや、Cambriconがクラウドからエッジ、デバイスまでをカバーする戦略とは異なる。推論市場はモデル展開の拡大に伴い今後も成長が見込まれ、昆侖芯はこの領域に注力する戦略を採っている。
一方で、収益面ではメディアが引用した調査メモによると、昆侖芯の2025年通年売上高は約35億元で、2024年の20億元から大幅に成長した。複数の証券会社レポートは、2026年の売上高が65億~83億元に達すると予測している。ただし、現時点で監査済みの財務データは公開されておらず、これらの数字の検証には目提出書類の開示を待つ必要がある。
デュアル上場戦略の背景にある思惑
昆侖芯が香港市場と科創板の両方を選んだ理由は、それぞれ異なるメリットを追求するためだ。香港上場は国際的な資金調達、ブランド認知度向上、海外機関投資家との接続を目的としている。AIチップ企業にとって、グローバルな投資家の前で技術価値を証明することは重要なプロセスだ。壁仞科技(Biren Technology)や天数智芯など競合他社も香港上場を進めており、参画が競争上必須となっている。
一方、科創板はハードテック企業に優遇姿勢を示しており、チップ企業が得られる評価プレミアムが香港市場を上回るケースがある。国内機関投資家の「自主制御(技術の自立)」というナラティブへの理解も深い。莫大な資金を消費するチップ開発にとって、潤沢な資金源を二つ確保することは研究開発のペースを左右する。
Baiduにとってもこの構造は合理的だ。近年、Baiduの評価は「インターネット企業」というレッテルに縛られ、AI投資への適切な市場評価が得られていなかった。昆侖芯を分離独立させることで、チップ事業は独立した資本市場で評価を受けられる。Baiduは筆頭株主としての恩恵を受け続けながら、本社はチップ開発に伴う継続的な損失が財務諸表に与える影響から解放される。中銀国際の試算では、昆侖芯はBaiduに約500億香港ドルの評価貢献をしており、これはBaidu時価総額の4分の1に相当するという。
課題は「Baidu専用チップ」からの脱却とソフトウェアエコシステム
長期間にわたり、市場では昆侖芯を「BaiduがERNIE大モデルを学習させるためのチップ」「Baiduエコシステムの内部部品」と見なす向きがあった。資本市場は、Baiduの内部需要を取り除いた場合の独立顧客の比率や、市場競争で獲得した収益の割合を問うてくる。
中国移動の受注は独立性を証明する一例だが、大口顧客一つでは不十分だ。目提出書類には、より体系的な顧客構造データが求められる。
さらに、ソフトウェアエコシステムの弱点も重要なテーマだ。NVIDIAの競争優位はGPUそのものではなく、ソフトウェア基盤のCUDAにある。国産チップが市場を奪うには、顧客が抱える移行コストの問題を解決しなければならない。昆侖芯はCUDAとの互換性で優れた性能を持つとされるが、これも具体的な顧客事例で検証される必要がある。
国産AIチップメーカー一斉の資本市場ダッシュ
昆侖芯の科創板準備開始は、国産AIチップ分野全体が資本市場へ向けて一斉に動き出している潮流の一部だ。MooreThreads(摩尔線程)はすでに科創板上場を果たし、壁仞科技は香港で上場を果たし、燧原科技(Enflame)は準備を完了し、天数智芯は香港上場への道を歩んでいる。これらの企業はほぼ同時期に市場の需要と資本の窓口が開いたことに気づいた。
業界予測では、AI半導体の売上高は今後も半導体市場全体に占める割合を高めていくとされる。これは昆侖芯だけにとどまらず、すべての国産チップメーカーにとって、NVIDIAなどの既存プレイヤーの支配的な地位に挑む大きな機会となる。
昆侖芯にとって、上場はあくまで新たな出発点に過ぎない。資金を獲得した後、次世代チップの技術ロードマップを期限通りに実現できるか、Baiduから完全に独立した商業エコシステムを構築できるかが、この企業の長期的価値を決定する。「Baiduのチップ部門」から「真の意味での独立チップ企業」への転換。この道のりは、IPOプロセスそのものよりも重要である。
よくある質問
- 昆侖芯(Kunlun Core)は百度から完全に独立するのですか?
- いいえ、完全な独立ではありません。Baiduは引き続き筆頭株主(持分比率57.67%)として残ります。ただし、事業運営や資本市場での評価はBaiduから分離され、独立した企業としての体裁を整えます。Baiduは主要株主としての恩恵を受け続けながら、チップ開発に伴う損失の影響を財務諸表から分離するのが狙いです。
- 他の中国のAIチップ企業と比較して、昆侖芯の強みは何ですか?
- 主な強みは、推論市場への特化と、Baiduの内部需要に加え中国移動などの大口外部顧客を獲得している点です。IDCデータでは2024年の出荷枚数で国内第2グループの先頭に立ちます。また、Baiduが長年培ってきたAIソフトウェア技術との親和性も強みの一つです。ただし、Huawei Ascendのような学習チップでのプレゼンスや、広範なソフトウェアエコシステムの構築は今後の課題です。
- なぜ昆両芯は香港と上海(科创板)の両方に上場しようとしているのですか?
- 二つの市場は異なるメリットを提供するためです。香港市場は国際的な資金調達と海外投資家へのアクセスを可能にし、ブランド価値を高めます。一方、上海の科創板は国内の技術自立(自主制御)志向の投資家に支持されやすく、チップ企業に対して高い評価プレミアムがつく可能性があります。二つの資金調達チャネルを確保することは、研究開発に莫大な資金を要する半導体事業にとって極めて重要です。
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