Samsung家電が中国市場から全面撤退、世界一のメーカーが“傲慢”で失った10年
世界販売台数トップのSamsung Electronicsが中国でテレビや冷蔵庫などの家電販売を全面停止。中国市場シェアはテレビ3.6%、冷蔵庫0.4%まで低下し、ローカライズを怠った戦略が裏目に出た格好だ。
2026年5月6日、Samsung Electronicsの中国法人は公式サイト上で、国内市場におけるテレビ、モニター、冷蔵庫、洗濯機など全家庭用電化製品の販売を停止すると発表した。携帯電話やストレージ製品は継続販売されるものの、かつて世界の家電市場を席巻した同社の中国事業は事実上の幕引きを迎えた。
静かに、しかし確実に進行した撤退劇
今回の決定は突発的なものではなかった。3月に開催された中国家電・家電見本市「AWE」をSamsungが欠席した時点で、市場関係者の間では中国市場縮小のシグナルと受け止められていた。4月には年内のテレビ・家電販売事業からの撤退計画がリーク。一部の代理店は1カ月前から補充停止と在庫一掃の通知を受けていたという。
販売停止の対象は、テレビ、モニター、大型業務用モニター、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、洗濯乾燥一体機、衣類ケア機、オーディオ、プロジェクター、掃除機、空気清浄機と多岐にわたる。Samsungの強みとされたモニターやサウンドバーも巻き添えとなり、3000元以上のハイエンドモニターで一定の収益を上げていたものの、全体シェアは3%未満。ニッチな存在だったサウンドバーも国内2位のシェアを持ちながら撤退対象となった。
アフターサービスについては、Samsung公式は関連法令に従い継続して提供するとしている。ただし、社内では新たな人員削減も開始されており、残るスマートフォン事業の担当者も対象になるようだ。退職条件は「N+3」が上限とされ、地域や部門によってはさらに厳しい条件が提示される可能性があるという。
韓国的思考が生んだ「水土不服」
Samsungが世界のテレビ販売台数で長年首位を走っているのは事実だ。しかし、世界第2位のテレビ市場である中国では、その勝者の方程式がまったく通用しなかった。
最大の要因は、市場の変化を読み誤り、ローカライズを怠った点にある。中国のテレビ市場では、4000元未満の価格帯が全体の6割を占めるが、Samsungはハイエンド路線に固執し、コストパフォーマンスの高い普及機をほとんど投入しなかった。同時に「グローバル統一製品」戦略を貫き、スマート体験や操作ロジック、ソフトウェアの適合性において、中国の消費者が求める機能を提供できなかった。
その結果、市場シェアは急落した。2013年には中国テレビ市場で18%超のシェアを持ち、冷蔵庫や洗濯機もトップクラスだったSamsungだが、2025年時点ではテレビが3.62%、冷蔵庫が0.41%、洗濯機が0.38%にまで低下。主要メーカーの枠から完全に脱落した。
技術面でも中国勢に後れを取った。TCLやハイセンスなどの中国ブランドはMini LEDテレビで急速にシェアを拡大し、2024年の小売数量シェアは31.8%、小売金額シェアは55.4%に達している。一方、Samsungが強みとするOLEDテレビの国内小売数量シェアはわずか0.2%にとどまる。LCDからOLED、そしてMini LEDへの移行という流れに乗り遅れ、製品が「水土不服」を起こしていた。
「日韓家電時代」の終焉
Samsungの中国撤退は孤立した現象ではない。1990年代以降、パナソニック、東芝、ソニー、LGなど日韓家電ブランドは技術力とブランド力で中国市場を席巻した。しかし、21世紀の第2十年目に入ると、国産サプライチェーンの整備と高いコストパフォーマンスを武器にした中国ブランドが台頭し、外資系ブランドの生存空間を急速に狭めた。
シャープは2016年にフォックスコンに買収され、東芝のテレビ事業は2017年にハイセンスに売却された。ソニーはTCLと合弁会社を設立し、パナソニックのテレビ事業はスカイワースに運営を委託している。Samsungの撤退は、この流れの最終章とも言える。
ユーロモニターのデータによれば、2025年の世界テレビ販売シェアでTCLやハイセンスなどの中国ブランドの合計は31.9%に達し、SamsungとLGの30.4%を上回った。市場分析では、今後数年で中国ブランドがSamsungを抜いて世界首位に立つとみられている。
中国ブランドの次の課題
Samsungの撤退により、中国の家電市場における外資系ブランドの存在感はさらに薄れる。しかし、これは「安穏」を意味するものではない。Samsungが失ったのは主にハイエンド市場であり、多くの中国ブランドがこの隙間を狙って競争をさらに激化させることは必至だ。
より重要なのは、グローバル市場でのポジションだ。日韓ブランドは欧米市場で依然として強い影響力を持っており、中国ブランドが真の世界支配を達成するには、国内市場での勝利だけでは足りない。Samsungの中国撤退は、中国メーカーにとって一つの節目であると同時に、世界市場での次の戦いへの号砲でもある。
よくある質問
- Samsungはなぜ中国の家電市場から撤退したのですか?
- 最大の要因は市場ニーズに合わない製品戦略とローカライズの不足です。ハイエンド志向が強くコストパフォーマンスの高い製品が少なかったこと、中国の消費者が求めるスマート体験や操作ロジックを提供できなかったことが響きました。また、TCLやハイセンスなどの中国ブランドがMini LED技術で急速にシェアを拡大し、競争に敗れた形です。
- 撤退後もアフターサービスは受けられますか?
- Samsung公式は関連法令に従い、アフターサービスを継続して提供すると発表しています。製品の修理やサポートに影響はないとされていますが、詳細は今後の公式案内を確認する必要があります。
- 中国のテレビ市場で今、注目すべきトレンドは何ですか?
- Mini LEDテレビが急速に普及しており、中国市場では数量・金額ともに主力技術となっています。一方、Samsungが強みとしていたOLEDテレビのシェアはごくわずかです。また、4000元未満の価格帯が市場の約6割を占めるなど、価格競争が激しいのも特徴です。
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