Snowflake、AWSのGravitonとAI基盤に60億ドル投資へ
Snowflakeが今後5年間でAWSのGraviton CPUとAIアクセラレーターに60億ドルを投じる計画を発表。AIサービスとデータ統合の強化を図る。
クラウドデータウェアハウス大手のSnowflakeが、Amazon Web Services(AWS)のカスタム設計CPU「Graviton」とAIアクセラレーターに、今後5年間で総額60億ドル(約8,700億円)を投じる計画を発表した。AI時代のデータ基盤を巡るクラウド投資競争が、新たな局面を迎えている。
SnowflakeとAWSの長年の関係が加速する
SnowflakeとAWSの関係は、2011年のSnowflake創業時にまで遡る。同社は設立以来、AWSのインフラ上に自社サービスを構築し続けており、今回の巨額投資はその関係をさらに深化させるものだ。
AWSマーケットプレイスにおけるSnowflakeの累計売上高は70億ドルを超え、2025暦年だけで20億ドルを上回ったという実績がある。こうした強固なビジネス基盤の上で、SnowflakeはAI分野への投資を一段と加速させる決断を下した形だ。 Snowflakeのシダー・ラマスワミー最高経営責任者(CEO)は、「企業がガバナンスされたデータに直接AIを持ち込み、より迅速に行動し、より高い密度で運用し、大規模で測定可能なインパクトを生み出すことを容易にしている」と述べ、今回の投資の意義を強調した。
Gravitonへの移行が示すCPUの復権
興味深いのは、SnowflakeがIntelやAMDの従来型CPUから、ArmベースのAWS Gravitonインスタンスへと計算リソースをシフトし続けているという点だ。
現在5世代目を迎えた最新のGravitonプロセッサーは、Arm Neoverse V3コアを192個搭載し、8800 MT/sのメモリ帯域を持つ12チャンネルのメモリサブシステムを備えている。これは、Armアーキテクチャのサーバー向けプロセッサーとしては極めて高い性能水準にある。 ここ数年、AI関連の議論といえばGPUやその他のAIアクセラレーターが注目の中心だった。しかし、AIエージェントが実際に稼働する場面では、CPUの役割が再び重要性を増している。AIモデル自体の推論はGPU上で実行されるものの、モデルが呼び出すSQLクエリやPythonスクリプトといったツールや関数の実行は、依然としてCPUに依存しているからだ。 各エージェントのパフォーマンスは、CPUがリクエストにどれだけ迅速に応答できるかに本質的に制限される。エージェント型AIの普及に伴い、CPUコアに対する需要が再び高まっている背景には、こうした構造的な理由がある。
Cortex AIが描くデータ分析の未来
今回の投資でSnowflakeが特に力を入れるのが、自社のCortex AIプラットフォームの強化だ。Cortex AIは、自然言語をSQLクエリに変換したり、データの要約やセンチメント分析を実行したりする機能を提供している。
具体的には、ユーザーが「先月の売上トップ5の商品を教えてほしい」といった自然言語で質問すると、Cortex AIがこれをSQLクエリに変換し、データウェアハウスから結果を取得・分析して回答を返す。従来はデータアナリストやエンジニアの手を借りなければならなかった高度なデータ分析が、ビジネスユーザーの手に届くようになるというシナリオだ。 今回の協定に基づき、SnowflakeはAWS上で稼働するGPUとGraviton CPUコアを組み合わせて、GenAIモデルとサービスの実行およびトレーニングを行う計画である。GPUがモデルの学習と推論を担い、Gravitonがデータ処理やクエリ実行を支える、役割分担型のアーキテクチャが想定されている。
年間12億ドルの投資は賭けか
年間約12億ドルに相当するこの巨額投資を、Snowflakeはどのように正当化しようとしているのだろうか。
同社の狙いは、AIツールが引き続き収益を牽引し、インフラ投資に見合うだけのリターンを生み出し続けることにある。データウェアハウス市場における競争は激しさを増しており、DatabricksやGoogle BigQueryといった競合他社もAI機能の強化にしのぎを削っている。Snowflakeにとっては、AI基盤への投資は競争上不可欠な選択肢と言える。 ウォール街の反応は概ね好意的だった。発表当日の取引時間外で、Snowflakeの株価は30%以上上昇した。投資家コミュニティが、この大規模インフラ投資を将来の成長につながる前向きな動きと評価したことを示している。
Gravitonの利用はSnowflakeだけではない
AWSのGravitonエコシステムの拡大は、Snowflakeにとどまらない。2026年4月には、MetaがAmazon Graviton 5のCPUコアを数千万個にわたって導入する計画を明らかにしている。この複数年にわたる協力により、MetaはAWSのGravitonプラットフォームにおける最大級の利用者の一つになるとみられている。
ArmベースのサーバーCPUは、従来のx86プロセッサーと比較して電力効率に優れているとされ、大規模データセンターの運用コスト削減に寄与する。AIワークロードの急増に伴い消費電力が増大する中、GravitonのようなArmベースの選択肢は、クラウドプロバイダーにとってコスト効率の観点から魅力を増している。
今後の展望 Snowflakeの今回の投資は、単なるインフラ増強にとどまらない意味を持つ。AIエージェントの時代において、データウェアハウスは単なるデータ格納庫ではなく、AIサービスの実行基盤として進化しつつある。その中心に、CPUとAIアクセラレーターの協調動作がある。
Snowflakeが60億ドルの投資で描くのは、ガバナンスされた企業データの上に、AIの知能を直接統合する未来だ。この戦略が成功すれば、データ分析の民主化はさらに加速し、企業の意思決定プロセスそのものが変わることになるだろう。一方で、巨額の先行投資が収益化のタイムラインとどう整合していくかは、今後も注視が必要だ。 ---
よくある質問
- Snowflakeの60億ドル投資の内訳はどうなっているのか
- 公表されている情報によると、投資先はAWSのArmベースGraviton CPUとAIアクセラレーターの両方で、今後5年間で年間約12億ドルのペースで支出される計画だ。具体的なCPUとAIアクセラレーターの投資比率は明かされていない。
- なぜSnowflakeはIntelやAMDからGravitonに移行しているのか
- GravitonはArmアーキテクチャを採用しており、ワットあたりの性能が高いとされる。大規模なデータ処理やAIワークロードでは消費電力が重要なコスト要因となるため、電力効率に優れたGravitonへの移行は運用コストの最適化につながると考えられる。
- Cortex AIとはどのようなサービスか
- Cortex AIはSnowflakeが提供するプラットフォームで、自然言語をSQLクエリに変換する機能や、データの要約、センチメント分析などのAI機能を備えている。データアナリストでなくても自然言語でデータ分析を行えることを目指している。
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