マスク対OpenAI裁判が結審、内部取引暴露の応酬
マスク氏がOpenAIを提訴した裁判が最終弁論を終えた。ブロックマン氏の日記やアルトマン氏の内部取引疑惑など、衝撃的な証言が相次いだ。来週から陪審員評議へ。
イーロン・マスク氏がOpenAIを提訴した裁判が、第一ラウンドの法廷審理を終え、最終弁論段階に入った。伝えられるところによると、過去3週間でマスク氏、OpenAIのサム・アルトマンCEOやグレッグ・ブロックマン社長、元最高科学責任者イリヤ・サツケバー氏、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOなど、AI業界の重要人物が次々と証人として出廷。10人以上の証人が衝撃的な証言を行い、内部文書が次々と公開された。来週から9人の陪審員が評議に入り、勧告裁定を出す予定だ。結果に関わらず、この裁判はすでにOpenAIの内部事情を全世界に明らかにしたと言える。
マスク氏の主張:「私なしにOpenAIはなかった」
訴訟の発端は2015年、マスク氏の誕生日パーティーにさかのぼる。マスク氏とGoogle共同創業者のラリー・ペイジ氏はAIの安全性をめぐって激論し、決裂。これを受けてマスク氏は「AIが人類を滅ぼす可能性がある」として、非営利・オープンソースを掲げる対抗組織の設立を決意した。
マスク氏は法廷で「私なしにOpenAIはなかった」と主張。自ら機関名を「OpenAI」と命名し、3800万ドルを寄付、無料のオフィスを提供し、創設メンバー全員にテスラのModel 3を贈ったという。さらに、GoogleからAI研究者サツケバー氏を引き抜き、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOに最初のDGX-1スーパーコンピュータを提供させ、マイクロソフトのナデラCEOに電話してコンピューティング資源を確保させたことも明かした。
しかし、2017年ごろから資金不足が深刻化。OpenAIは営利構造への転換を模索し始めた。マスク氏は営利子会社の設立には同意したものの、絶対的支配権を要求。取締役会の過半数掌握や、OpenAIのテスラへの統合案を提示したが、他の共同創業者たちの反発に遭った。最終的に2018年初頭、マスク氏は利益相反を理由に退任した。
ブロックマン氏の日記が暴露した「嘘」
裁判の第二週、マスク氏側が提出した最大の打撃証拠は、OpenAI共同創業者兼社長ブロックマン氏の私的な日記だった。2017年11月の記述には「信じられない、私たちは非営利を約束したのに、3カ月後に公益会社に変わったら、それは嘘になる」と記され、さらに「これはマスクから離脱する唯一のチャンスだ」と続いていた。また、アルトマン氏がブロックマン氏に自身の家族基金を通じて1000万ドルを供与していたことも明らかになり、ブロックマン氏はこの利益関係を開示していなかった。
ブロックマン氏は法廷で日記の真正性を認めたものの、文脈を強調。さらに、自身がOpenAI営利子会社に保有する株式の現在価値が約300億ドルに達していることを証言した。マスク氏の弁護士が「なぜ非営利財団に返還しないのか」と質問したが、ブロックマン氏は正面から答えなかった。
最も微妙な立場の証人:シボン・ゼリス氏
シボン・ゼリス氏は、マスク氏の部下でありながらOpenAIの取締役も務め、さらに人工授精でマスク氏の子供4人を出産した人物だ。法廷でOpenAI側の弁護士は、ゼリス氏がOpenAI内部でマスク氏の「目」として情報を伝え、引き抜き工作を支援していたと指摘。「あなたの忠誠心は誰にあるのか」との質問に対し、ゼリス氏は「AIが人類にもたらす最善の結果にある」と答えた。
さらに驚くべき事実として、ゼリス氏は2023年にマイクロソフトがOpenAIに100億ドルを出資する契約を自ら承認票を投じていた。これはマスク氏が「公益機関が盗まれた」と批判するまさにその取引である。OpenAI側は「マスク氏が最も信頼する人物でさえ、この取引に問題はなかったと考えていた証拠だ」と主張した。
サツケバー氏の反乱:アルトマン氏追い落としの主謀者
元最高科学責任者のサツケバー氏は、自身がOpenAI営利子会社に保有する株式が約70億ドルに上ることを証言。ブロックマン氏の300億ドルと合わせ、マスク氏の弁護士は「非営利の名の下に億万長者が生まれた構造」を批判した。
サツケバー氏はまた、2023年11月にOpenAI取締役会が突然アルトマン氏を解任した事件の計画立案者だったことを認めた。彼は約1年かけてアルトマン氏の不誠実な証拠を体系的に収集し、当時のCTOミーラ・ムラティ氏と協議していた。ムラティ氏も法廷で「アルトマン氏は一貫して不誠実で、私の権限を弱体化させ、幹部同士を内部争いに駆り立てた」と証言した。解任後、残留した取締役会は競合AI企業Anthropicと接触していたことも明らかになった。
この裁判は、AI業界の権力闘争と、非営利の理念が商業的利益に飲み込まれる過程を赤裸々に描き出した。陪審員の評議結果が注目される。
よくある質問
- なぜマスク氏はOpenAIを提訴したのか?
- マスク氏は2015年に非営利・オープンソースのAI研究組織としてOpenAIを共同設立しましたが、後に営利構造に転換し、マイクロソフトから巨額出資を受けたことは「公益の使命に反する」と主張。自身の貢献が無視されたとして、OpenAIを提訴しました。
- ブロックマン氏の日記には何が書かれていたのか?
- 「非営利を約束したのに3カ月後に営利会社に変わるのは嘘だ」「これはマスクから離脱する唯一のチャンスだ」といった記述があり、マスク氏排除の意図が示唆されました。また、アルトマン氏から1000万ドルの利益供与を受けていたことも明らかになりました。
- この裁判の結果はどうなるのか?
- 来週から9人の陪審員が評議に入り、勧告裁定を下します。結果に関わらず、裁判はすでにOpenAIの内部権力構造や非営利からの逸脱過程を広く暴露し、AI業界のガバナンスに大きな影響を与えるとみられています。
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