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海上にAIデータセンターを展開、Panthalassaが波力発電で200億円超を調達

Panthalassaが波力発電を活用した海上AIデータセンター「ノード」の開発を加速。シリコンバレーから巨額投資を集め、2026年中に北太平洋での実証試験を予定する。

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海上にAIデータセンターを展開、Panthalassaが波力発電で200億円超を調達
Photo by Hanson Lu on Unsplash

波の力でAIを動かす——Panthalassaの壮大な構想

陸上のAIデータセンター建設が用地取得や電力供給の壁に直面する中、シリコンバレーの投資家たちが大海原に白羽の矢を立てた。Palantirの共同創業者ピーター・ティールらを含む投資家グループが、波力発電で駆動する海上AIデータセンターの開発を進めるPanthalassaに総額2億ドル(約290億円)超を投じた。

同社は5月4日、最新の資金調達ラウンドで1億4000万ドルを調達したと発表した。この資金は、オレゴン州ポートランド近郊にパイロット製造施設を完成させ、波の力を受けて浮遊する「ノード」の展開を加速するために充てられる。

波の動きを電気に、電気をAI推論に変える仕組み

Panthalassaのノードは、海面に浮かぶ巨大な鋼鉄製の球体と、そこから水面下に垂直に伸びるチューブ状の構造で成り立っている。波の上下動がチューブ内の水を上方へ押し上げ、加圧された貯水槽に送り込まれる。そこから水を開放することでタービン発電機を回し、搭載されたAIチップに再生可能エネルギーを供給するという仕組みだ。

特筆すべきは、このノードがエネルギーを陸上に送るのではなく、船上で直接AI推論処理を行う点にある。AIモデルが出力する推論トークンは、衛星リンクを通じて世界中の顧客に送信される。

ペンシルベニア大学のコンピュータアーキテクトであるベンジャミン・リー氏はArs Technicaの取材に対し、「Panthalassaのアイデアは、エネルギー送電の問題をデータ送信の問題に変換するものだ」と指摘。AIモデルを海上ノードに転送し、プロンプトやクエリに応答する必要があると説明した。

海水による冷却がもたらす優位性

海上データセンターには、エネルギー面だけでなく冷却面でも大きな利点があるとされる。リー氏は「海洋ベースのコンピューティングは、周囲温度が非常に低いため、巨大な冷却アドバンテージを提供できる可能性がある」と述べた。従来の陸上データセンターは冷却に大量の電力と淡水を消費しており、この問題はAI需要の急増に伴い深刻化している。

Panthalassaは、ノードのAIチップを周囲の海水を利用して冷却できると主張しており、これが従来型データセンターに対するもう一つの差別化要因となる。

2026年中に北太平洋で実証試験

最新のプロトタイプ「Ocean-3」は、2026年後半に北太平洋での試験が予定されている。Financial Timesによれば、この最新版は全長約85メートルに達し、ロンドンのビッグベンやニューヨークのフラットアイアンビルディングに匹敵する高さになるという。

同社はこれまでにも波力変換技術のプロトタイプを複数試験してきた。2021年に「Ocean-1」をテストし、2024年2月にはワシントン州沖で「Ocean-2」の3週間にわたる海上試験を実施している。

CEO兼共同創業者のガース・シェルドン=コールソン氏はCBSのインタビューで、将来的に数千基のノードを展開したいとの希望を表明している。

課題も多い——衛星通信の帯域と遅延の壁

壮大な構想には当然ながら課題も山積している。ノードと顧客間のデータ送信に衛星リンクに依存するということは、帯域幅の制限と信号の遅延という問題を抱えることになる。大量のデータを高速に伝送するため、データセンターが今なお光ファイバーケーブルを利用しているのはそのためだ。

さらに、海上環境という過酷な条件下でのハードウェアの維持管理、海洋生態系への影響、海賊や自然災害に対するセキュリティ対策など、乗り越えるべきハードルは少なくない。

それでも、AI需要の爆発的な増大に伴う電力消費と土地利用の問題が先鋭化する中、大洋を活用するという発想は、業界のパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めている。Panthalassaの試みが実用化の段階にどこまで到達できるか、今後の展開から目が離せない。


FAQ:

Q: Panthalassaの海上データセンターはどのような仕組みで電力を得るのですか? A: 海面に浮かぶ鋼鉄製の球体から水面下に伸びるチューブ構造を利用します。波の上下動でチューブ内の水が上方に押し上げられ、加圧された貯水槽から水を開放してタービン発電機を回すことで再生可能エネルギーを得ます。この電力が船上のAIチップを直接駆動します。

Q: なぜ海上にデータセンターを建設する必要があるのですか? A: 陸上でのAIデータセンター建設は、用地取得の困難さや膨大な電力・冷却水の確保が課題となっています。海上では海水による冷却が容易で、波力発電という再生可能エネルギーを活用できるため、これらの問題を同時に解決できる可能性があります。

Q: 衛星通信を使うことによるデメリットは何ですか? A: 衛星リンクは光ファイバーケーブルと比べて帯域幅が限られ、信号の遅延も大きくなります。大量のデータをリアルタイムでやり取りするAI推論処理において、この通信速度の制約がボトルネックになる可能性があります。

出典: Ars Technica

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