FPGAで復刻された43年前のApple Lisa、GUI搭載初の商用PCを現代技術で再現
1983年に発売された初のGUI搭載商用PC「Apple Lisa」が、FPGAボードを用いて愛好家によって忠実に再現された。HDMI出力やUSB対応など現代的な改良も施されている。
GUI搭載PCの元祖、Apple LisaがFPGAで現代に蘇る
1983年に発売されたApple Lisa。多くの人はAppleのGUI搭載コンピューターの歴史といえば1984年のMacintoshから始まると思っているかもしれないが、実はLisaこそがGUIを搭載した最初の商用パソコンだった。当時の価格は9,995ドル(現在の価値で約34,000ドル相当)と高額で、商業的には失敗作とされた機種だ。
そんな歴史的マシンを、愛好家でありYouTuberのAlex Anderson-McLeod氏が、最新のFPGA技術を用いて忠実に再現した。プロジェクト名は「LisaFPGA」。
ワンボードで構成されたLisaFPGAの設計
LisaFPGAの中心となるのはXilinx製のArtix 7-100T FPGA。Lisaの「頭脳」を担うこのチップに、2MBのSRAM、エミュレートされたハードドライブ、フロッピーディスク、シリアルポート、そしてキーボード・マウスの各コネクタが一枚の基板上に集約されている。
Anderson-McLeod氏は動画でこのプロジェクトを公開しており、LisaFPGAの設計思想と動作デモンストレーションを披露している。
原機を凌駕する現代的仕様
LisaFPGAは単なるレプリカではなく、現代のハードウェアの恩恵を活かした大幅な改良が施されている。
映像出力:オリジナルのLisaではビデオコンバーターが必要だったが、LisaFPGAはHDMI出力をネイティブでサポート。スキャンライン表示のオプションも用意されており、レトロなCRTのような表示も選択できる。2つのメインビデオモードはスイッチ一つでオン・ザ・フライで切り替え可能だ。
入力デバイス:オリジナル仕様のコネクタに加え、USBポートも搭載されているため、純正のキーボードやマウスを入手する必要はない。シリアルポートに関しても、USBハブ機能が内蔵されているため、メインのUSB-Cコネクタ経由でシリアル通信が可能。USB-シリアル変換アダプタや巨大なDB25コネクタを探す手間が省ける。
ストレージ:フロッピーディスクのイメージは、SDカード、PCへの直接接続、あるいはオリジナルのフロッピードライブ接続のいずれかから読み込むことができる。
原機の「遅さ」も再現、そして大幅な高速化も
オリジナルのLisaは、ソフトウェア設計の選択と、5MHz動作のMotorola 68000 CPUの採用により、当時としてもかなり動作が遅いマシンとして知られていた。Anderson-McLeod氏はこの制約にも敬意を表し、LisaFPGAには2段階のオーバークロック倍率を搭載。物理スイッチでオン・ザ・フライに切り替えれば、最大で75MHz相当の動作速度まで引き上げることができるという。
オープンソース化と今後の展望
現在公開されているLisaFPGAはバージョン2だが、Anderson-McLeod氏はいくつかの修正を加えたバージョン3を間もなく公開する予定だとしている。プロジェクトはGitHub上で完全にオープンソース化される予定で、氏はクローンの販売も検討中だという。さらに今月後半にはVintage Computer Festival SouthwestでLisaFPGAについて講演を行う予定である。
失敗作が切り開いたGUIの未来
Lisaはその高価格とソフトウェアの少なさから商業的には失敗とされた。販売されなかった在庫2,700台が税務上の損失処理としてユ�タ州ローガンに廃棄されたという、不名誉な結末を迎えたマシンでもある。
しかし、Lisaが切り開いた道の先には1984年のMacintoshがあった。2,459ドルという手の届く価格でGUIを世に広めたMacintoshは、Appleブランドを世界に知らしめた。Anderson-McLeod氏によるLisaFPGAは、その原点に改めて光を当て、レトロコンピューティング愛好家だけでなく、GUI黎明期の技術に関心を持つすべての人の興味を引くプロジェクトとなりそうだ。
FAQ
Q: Apple LisaFPGAは誰でも作れるのか? A: Anderson-McLeod氏はプロジェクトをGitHub上で完全にオープンソース化する予定としており、FPGA開発の知識があれば誰でも再現できるようになる見込みだ。基板自体の販売も検討されているため、完成品を入手できる可能性もある。
Q: なぜ43年前のパソコンをFPGAで再現する必要があるのか? A: オリジナルのApple Lisaは希少かつ高価で、維持も困難だ。FPGAで再現することで、ハードウェアの劣化を気にせず当時のソフトウェア環境を体験できる。また、コンピューター史におけるGUIの原点を現代の技術で保存・体験する意義は大きい。
Q: LisaFPGAの性能はオリジナルと比べてどうか? A: 基本的なアーキテクチャはオリジナルを忠実に再現しているが、オーバークロック機能により最大75MHz相当まで高速化可能。HDMI出力やUSB対応など、現代の周辺機器との親和性も大幅に向上している。
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