AIエージェント検索「last30days-skill」公開
ソーシャルデータを横断検索し、エンゲージメントスコアを返すAIエージェントツール「last30days-skill」が公開された。RedditやX、YouTube、Polymarketなどの壁を越えて、リアルタイムな情報を取得する。
AIエージェントがRedditの投稿やX(旧Twitter)のポスト、YouTubeのトランスクリプト、Polymarketのオッズを一斉に検索し、それらをユーザーのエンゲージメント(アップボート、いいね、リアルマネーでの投票)でスコアリングする。そんなオープンソースの検索エンジン「last30days-skill」が登場した。
GitHubで公開されたこのスキルは、従来の検索エンジンがカバーしきれないソーシャルデータをAIエージェント経由で横断的に取得し、一つのブリーフィングにまとめる。開発者は「Googleがエディターを集約するのに対して、/last30daysは人間を検索する」と説明する。
価値と問題意識
現代の情報環境は、各プラットフォームがAPIや認証で囲まれたサイロ化した状態にある。Google検索はRedditのコメントやXの投稿を十分にインデックスしない。ChatGPTはRedditとの契約を持つが、XやTikTokを検索できない。GeminiはYouTubeを持つがRedditは持たない。Claudeはネイティブではどのソーシャルデータも持たない。
この断絶こそが、last30days-skillが狙う空白領域だ。ユーザーが各サービスにAPIキーやブラウザセッションを提供することで、AIエージェントが12以上の隔離されたプラットフォームを一気に検索し、相互にスコアリングする。
動作の仕組み
インストールは単純だ。Claude Code向けにはマーケットプレイスからプラグインとして追加する。Codex、Cursor、Copilot、Gemini CLIなど50以上のAIエージェントホスト向けにはnpxコマンドでグローバルインストールする。ゼロコンフィグでReddit、Hacker News、Polymarket、GitHubはすぐに使える。最初の実行時に30秒でX、YouTube、TikTokなどの追加データソースをアンロックするウィザードが起動する。
検索は並列で行われ、スコアリングは「実際の人々がエンゲージした行動」に基づく。Redditのアップボート、Xのいいね、YouTubeのトランスクリプト、TikTokのエンゲージメント、Polymarketのオッズ(リアルマネーと内部情報に裏付けられたもの)――これらすべてをAIエージェントジャッジが統合して一つのブリーフィングを生成する。
具体的なユースケース
開発者は例として、ある人物「Peter Steinberger」を検索するケースを挙げている。Googleで検索すれば2023年時点のLinkedInプロフィールが出てくるだけだが、/last30daysでは「今月OpenAIに参加しCodexに取り組んでいる」「Anthropicのサードパーティエージェント禁止に反対している」「23件のPRを85%のマージ率で提出している」「LobsterOSというクロスデバイスエージェント制御OSを構築している」「r/ClaudeCodeで彼が英雄か害かで569アップボートの議論が起きている」といった情報が、Xの投稿、Redditスレッド、YouTubeトランスクリプト、GitHubコミットから即座に拾い出される。
この機能は営業先の企業の直近30日間の実態把握、ミーティング前の相手の最近のツイートやポッドキャストの確認、旅行先の最新コミュニティ情報の取得、さらにはビルド前の最新技術動向の調査に応用できる。
なぜ作られたのか
開発者は「AIの分野で情報を追い続けるために作った」と述べる。すべてが毎日変わる業界で、RedditやXの“オタクたち”は常に真っ先に情報を掴んでいる。より良いプロンプトを求めて作ったが、やがてより大きなものになった。営業の電話の前に企業の直近30日間の実態を知るため、ミーティングの前に相手の最近のツイートやポッドキャストのトランスクリプトを読むため、ディズニーワールド旅行の前にどのアトラクションが閉鎖されているのか、コミュニティがGenie+をどう評価しているのかを知るため――そうした場面で使われている。
類似ツールとの比較
last30days-skillは、いわゆる「AIエージェント統合基盤」とも呼べる領域に位置づけられる。当サイトの過去記事「AIエージェントとは?仕組みと主なフレームワークを解説」でも指摘したように、AIエージェントが複数の外部ツールを呼び出してタスクを実行するアプローチが広がっているが、last30days-skillは「検索」という特定のユースケースに特化しつつ、ソーシャルデータの横断取得にフォーカスしている点で特異だ。
当サイトの過去記事「E2B、182KスターのAIエージェント統合基盤」で紹介されたE2B(Effective Executable Brain)のような汎用的なコード実行環境とは異なり、last30days-skillは「人間の行動データ」を検索対象に特化させている。GoogleがインデックスしないRedditのコメントやXのポストを、ユーザー自身のAPIキーで取得し、AIエージェントが評価する――このアプローチは、検索の民主化とも言える。
技術的な制約と今後の可能性
留意すべきは、このツールが動作するためには各プラットフォームへのアクセス権限(APIキーやブラウザセッション)をユーザー自身が用意する必要がある点だ。ゼロコンフィグで動くRedditやGitHubとは異なり、XやYouTube、TikTokのデータを取得するには各サービスの認証が必要になる。また、各プラットフォームのAPI制限や利用規約にも注意が必要だ。
しかし、AIエージェントが複数の壁に囲まれたデータソースをまたいで検索できるというコンセプトは、今後の情報検索の在り方を変える可能性を秘めている。ガートナーのハイプサイクルで言えば、まだ黎明期にある「AIエージェント経由の情報取得」という分野だが、実際に動くツールが公開されたことで、コミュニティでの議論が加速するだろう。
編集部の見解
短期的影響: 今後3〜6ヶ月で、last30days-skillはAIエージェント開発者やプロダクトマネージャーの間で「リアルタイム市場調査ツール」として使われる可能性が高い。特にAI業界のように変化が激しい分野で、競合の動向やコミュニティの声を素早く把握したい層に刺さると見る。また、このアプローチが注目されれば、類似の「ソーシャル横断検索エージェント」が各LLMクライアントに標準機能として実装される動きも予想される。
長期的視点: 1〜3年のスパンでは、この手法が従来の検索エンジンのオルタナティブとして定着するかどうかが焦点になる。現在はGoogleが支配する検索市場だが、AIエージェントがユーザーに代わって壁を越えたデータを取得・評価するモデルが一般化すれば、検索のパラダイム自体が変化する可能性がある。特に、プライベートコミュニティのデータやリアルタイムのソーシャルシグナルを重視するビジネスユーザーにとっては、価値ある代替手段となり得る。ただし、各プラットフォームがAPIアクセスを厳格化するリスクもあり、持続可能性には課題が残る。
編集部からの問い: ユーザーが自身のAPIキーを提供することで、各プラットフォームのデータを横断検索できるという設計は便利だが、プライバシーとデータ利用の透明性をどう担保するかという課題も浮かび上がる。また、「エンゲージメントスコア」のアルゴリズムがブラックボックスにならないようにするにはどうすべきか。コミュニティとして議論を深めるべきポイントだろう。
参考
- mvanhorn/last30days-skill (GitHub) — https://github.com/mvanhorn/last30days-skill — 2026-06-07公開
- 当サイト過去記事: AIエージェントとは?仕組みと主なフレームワークを解説 (https://singulism.com/ja/)
- 当サイト過去記事: E2B、182KスターのAIエージェント統合基盤 (https://singulism.com/ja/)
よくある質問
- last30days-skillは無料で使えますか?
- リポジトリはオープンソースで公開されており、基本的には無料で利用できます。ただし、XやYouTubeなど追加データソースをアンロックするには、各プラットフォームのAPIキーやブラウザセッションを自分で用意する必要があります。
- インストール方法は?
- Claude Codeを使用する場合はマーケットプレイスからプラグインを追加します。他のAIエージェント(Codex、Cursor、Copilot、Gemini CLIなど)では`npx skills add mvanhorn/last30days-skill -g`コマンドでグローバルインストールします。初回実行時にセットアップウィザードが起動し、追加データソースの設定も行えます。
- 検索結果のスコアはどのように決まりますか?
- 各プラットフォームでのユーザーエンゲージメント(Redditのアップボート数、Xのいいね数、Polymarketのオッズなど)を元に、AIエージェントジャッジが統合評価を行います。具体的なアルゴリズムの詳細はリポジトリのSKILL.mdに記述されています。
コメント