Waymo使用済みバッテリー、系統用蓄電に転用
Waymoがロボタクシーから交換・廃車時に発生する使用済みバッテリーを、B2U Storage Solutionsが系統用蓄電設備に転用する戦略的供給契約を発表。カリフォルニアとテキサスの送電網安定化に貢献する。
自動運転タクシー大手のWaymoが、車両から交換・廃車される使用済みバッテリーを定置型蓄電設備に転用する取り組みを本格化させる。同社は6月4日、蓄電システム企業のB2U Storage Solutionsとの間で戦略的供給契約を締結したと発表した。数千台のロボタクシーから生まれる中古バッテリーは、カリフォルニア州とテキサス州の送電網を支える大規模貯蔵設備へと姿を変えることになる。
中古バッテリーで系統安定化
B2U Storage Solutionsは、EVから取り外された使用済みバッテリーを集め、それを定置型の大規模蓄電プロジェクトに設置するビジネスを手がける。同社のCEOであるFreeman Hall氏はArs Technicaに対し、「当社の事業は、車載用途に適さなくなったEVバッテリーから完全な残存価値を引き出すことだ」と語っている。蓄電設備は、再生可能エネルギーの余剰電力を低需要時に貯蔵し、電力網がピーク需要を迎えた際に放出する役割を担う。
今回の契約により、B2UはWaymo車両の寿命が尽きた時点で発生するバッテリーに加え、稼働中の車両から交換される中古バッテリーも調達できるようになる。Waymoは「予防保守」の一環として、バッテリーの効率を改善するために交換のタイミングを計っている。Waymoのサステナビリティ・環境担当責任者であるAdam Lenz氏は、「バッテリーにはまだ多くの寿命が残っている。そこで私たちはこうしたセカンドライフ用途に目を向けている」と説明する。
劣化はあっても十分な容量
EVのバッテリーは容量が低下しても、系統用蓄電であれば十分に活用できる。テレマティクス企業Geotabが2025年に発表した分析(22,700台以上のEV、21車種を対象)によると、平均的なバッテリー容量の損失は年間約2.3%にとどまる。8年経過後も元の容量の81%以上を維持する計算だ。
Waymoの現在のフリートは約4,000台で、主力はJaguar I-Pace(90kWhのリチウムイオンバッテリー搭載)だ。同社は中国Zeekr製の「Ojai」ロボタクシー(93kWhバッテリー)の展開も始めている。これらの車両が一般のEVよりはるかに長い距離を走ることは、Waymo側も認めており、「通常の消費者が運転する距離を超えている」と述べている。
B2UのHall CEOは、バッテリー劣化の影響について「ある程度の容量低下はあるが、転用に適した時点でも1台あたりかなりの容量が残っている」と評価する。具体的に交換時の平均走行距離は非公表だが、Waymoの車両は時間あたりの稼働率が高く、劣化速度は一般EVより速いと見られる。
カリフォルニアとテキサスを支える
Waymoのフリートが今後拡大すれば、供給される中古バッテリーの総容量は数百メガワット時に達する可能性がある。これらの蓄電設備は、とりわけ再生可能エネルギーの変動が大きいカリフォルニアとテキサスの電力網にとって貴重なリソースとなる。日中の太陽光発電の余剰をため、夕方のピーク時に放出するといった用途が想定される。
EVバッテリーのリユース(セカンドライフ活用)は業界全体の課題だが、Waymoのような大規模フリートと蓄電事業者の直接契約はまだ珍しい。通常のEVではバッテリーが市場に出回るまでに時間がかかるが、Waymoは車両の稼働サイクルが短いため、比較的早いペースで中古バッテリーが発生する。
なお、WaymoはAlphabet傘下の企業であり、同社は先日850億ドルの資金調達を実施したことが報じられている(関連記事)。自動運転技術への投資が加速する中、バッテリーのリユースによる収益化やESG(環境・社会・ガバナンス)評価の向上も、事業全体の持続可能性を高める要素となりそうだ。
編集部の見解
短期的影響:今回の契約が示すのは、EVバッテリーのセカンドライフ市場が、フリート事業者と蓄電事業者の間で直接取引される段階に入ったことだ。今後3〜6ヶ月で、他の配車サービスや物流企業が同様のリユース契約を結ぶ動きが加速すると見られる。Waymoのバッテリー交換サイクルが一般EVより短いことから、B2Uは安定した供給源を確保し、蓄電プロジェクトの計画が立てやすくなる。カリフォルニアとテキサスでは、系統用蓄電の案件が増えているが、新品の系統用バッテリーより低コストで調達できる中古品の競争力が高まるだろう。
長期的視点:1〜3年のスパンでは、Waymoのフリートが数千台から数万台に増えるにつれ、供給される中古バッテリーの総容量がグリッドスケールの蓄電所を複数建設できる規模に達する可能性がある。これは電力会社にとって新たな調達オプションとなる一方、自動車メーカーにとっては「バッテリーの残存価値をどう回収するか」という設計思想そのものに影響を与える。バッテリーのリユースを前提とした交換容易なパック設計や、状態監視データの標準化が進むきっかけになるかもしれない。
編集部からの問い:本件で気になるのは、Waymoがバッテリーを「予防保守」として車両から早期に取り外す基準だ。具体的な走行距離や容量低下の閾値が公開されていないため、中古バッテリーの実質的な価値や劣化状態を第三者検証できない。また、B2Uの蓄電事業の収益性が電力市場価格に依存するため、長期的なビジネスモデルの安定性はどう評価すべきか。日本でも、タクシー会社や物流事業者が同様のリユーススキームを導入できる環境が整うのか、議論の余地がある。
参考
よくある質問
- Waymoの使用済みバッテリーはどの程度の容量が残っているのか
- Geotabの分析では、EVバッテリーの平均容量損失は年間約2.3%で、8年後でも元の容量の81%以上を維持する。Waymo車両は一般EVより走行距離が多いため劣化が進む可能性があるが、転用時点でも1台あたり数十kWh程度の容量が残ると見られる。
- 今回の契約でどのくらいの蓄電容量が確保されるのか
- Waymoのフリートは約4,000台(Jaguar I-Paceの90kWhおよびZeekr製Ojaiの93kWh)。すべてのバッテリーが転用された場合、数百メガワット時の容量が見込まれる。ただし実際には交換時期や廃車のタイミングにばらつきがあり、段階的に増えていく。
- カリフォルニアとテキサス以外での展開はあるのか
- 現時点ではカリフォルニアとテキサスの電力網向けとされている。両州は太陽光発電の導入が進み、系統用蓄電のニーズが高い。他の地域への拡大は、Waymoのフリート展開とB2Uの事業計画次第となる。
コメント