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AMD Helios MI455X、Ethernet接続に性能課題

AMDがComputex 2026で次世代AIラックスケールシステムHelios MI455Xを公開。初期版はUALink-over-Ethernet接続となり、専用インターコネクトに比べレイテンシや性能の決定性に課題がある。真のUALink版も計画。

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AMD Helios MI455X、Ethernet接続に性能課題
Photo by Đào Hiếu on Unsplash

AMDは6月4日、台北で開催中のComputex 2026において、次世代AIラックスケールシステム「Helios」を発表した。同システムは最大72基のInstinct MI455X AIアクセラレータを搭載し、NvidiaのVera RubinベースNVL72 VR200に対抗する製品となる。Tom’s Hardwareの報道によれば、Heliosの初期出荷版はUALink-over-Ethernetによるスケールアップ接続を採用するため、特定のワークロードで性能が制約される可能性がある。

Heliosの概要

HeliosはAMD初のラックスケールAIシステムだ。第6世代EPYC「Venice」CPU(最大256コア)と、72基のInstinct MI455Xアクセラレータを組み合わせ、合計31TBのHBM4メモリと1400TB/sのメモリ帯域幅を提供する。AMDはHeliosのFP4密行列演算性能を約2900 PFLOPSと推定しており、計算性能ではNvidiaのVR200 NVL72に及ばないものの、HBM4メモリ容量では優位に立つ。これにより、大規模言語モデル(LLM)実行などのメモリ集約型ワークロードで強みを発揮するとAMDは見込んでいる。

相互接続にはAMD提唱のUALink(Ultra Accelerator Link)が採用されるが、初期システムはUALink-over-Ethernet接続を利用する。この接続方式は最大260TB/sの集約スケールアップ帯域幅を実現し、これはNvidiaのNVL72 VR200と同等の数値だ。また、HeliosはPensando Vulcanoネットワークインターフェースカード(NIC)を搭載。これは業界初の800GbE対応カードの1つであり、Ultra Ethernet仕様に準拠し、最大43TB/sのスケールアウト帯域幅を提供する。

相互接続の課題

HeliosがUALink-over-Ethernetを初期採用する理由は、UALinkスイッチがまだ最終化・検証・認定の段階にあるためだ。AMDのAI顧客による検証プロセスを経て初めて、真のUALinkインターコネクトが展開可能となる。

Ethernetベースの最大の利点は、既存のエコシステムを活用できる点にある。EthernetスイッチングASICやケーブル、その他のコンポーネントはハイパースケーラーやクラウドプロバイダーによって世界規模で使用されており、これらを活用することでHeliosの展開を迅速化できる。検証済みの部品を使えるため、信頼性と調達の容易さが確保される。

しかし、Ethernetには本質的な欠点がある。Ethernetはもともと汎用ネットワーキング技術として設計されたものであり、AIアクセラレータのスケールアップを前提としていない。その結果、通信レイテンシが高くなり、プロトコルオーバーヘッドが増加し、専用スケールアップファブリックに比べて性能の決定性が低下する。大規模AIトレーニングジョブでは、72基すべてのMI455Xアクセラレータが協調動作する必要があり、この非決定的な挙動が学習効率に悪影響を及ぼす可能性がある。

真のUALinkとの違い

UALinkはAMDが業界団体を通じて推進するオープンな高速相互接続規格である。PCI Expressを超える帯域幅と低レイテンシを実現し、GPUやAIアクセラレータ間の直接通信を最適化する。真のUALinkは専用スイッチと専用プロトコルを用いるため、Ethernetを介した場合よりもオーバーヘッドが少なく、決定論的なレイテンシを実現する。

一方、UALink-over-EthernetはUALinkのプロトコルをEthernetフレームにカプセル化する方式だ。既存のEthernetインフラを流用できる半面、パケット処理のオーバーヘッドやジッタが発生しやすい。AMDは両方のモードをサポートする用意があり、UALinkスイッチの準備が整い次第、顧客は段階的に移行できると見られる。

初期システムがUALink-over-Ethernetに依存せざるを得ない背景には、UALinkエコシステムの成熟度がある。相互接続の規格は確立されつつあるが、実際のスイッチハードウェアの量産と検証には時間がかかる。AMDの顧客であるハイパースケーラー各社は、自社データセンターで大規模な検証を実施してから本番投入する必要がある。

市場への影響と競争環境

HeliosはNvidiaのVera RubinベースNVL72 VR200と直接競合する。Nvidiaは独自のNVLinkおよびNVSwitchによる密結合インターコネクトで長年にわたり優位を築いてきた。AMDはUALinkでこれに対抗しようとしているが、初期段階でのEthernet依存は競争上のハンディキャップとなる可能性がある。

計算性能で見ると、Heliosの2900 FP4 PFLOPSはNvidiaのVR200に劣るものの、31TBのHBM4メモリ容量はメモリ集約型ワークロードで大きなアドバンテージとなる。特に、GPT-4クラスの超大規模モデルを学習・推論する場合、モデルパラメータをメモリに保持できるかどうかが性能を左右する。AMDはこの点を強調し、メモリ容量重視の顧客を獲得したい考えだ。

相互接続の性能差は、モデル並列分散学習の効率に直結する。テンソル並列やパイプライン並列を多用する大規模学習では、GPU間の通信レイテンシが学習速度を律速する。Ethernet経由のUALinkでは、専用インターコネクトと比較して通信オーバーヘッドが大きくなり、同じモデルサイズでも学習に要する時間が増加する可能性がある。一方、推論ワークロードではメモリ容量の優位性が勝るため、Heliosは推論特化の用途で差別化できるかもしれない。

AMDのパートナー企業各社はComputex 2026の会場でHeliosのプロトタイプを展示しており、2026年後半に出荷を開始する計画だ。初期顧客はUALink-over-Ethernet版を受け取り、後日真のUALinkにアップグレードするオプションが提供される見通し。

編集部の見解

短期的に見ると、Heliosの初期展開がUALink-over-Ethernetに限定される点は、AMDのAIデータセンター戦略における明らかな制約となる。NvidiaのNVL72が専用NVLinkで安定した性能を提供するのに対し、HeliosはEthernetの不確定要素を抱えることになる。ハイパースケーラー各社は巨額のAI投資を行う中で、性能が予測可能なNvidia陣営を選ぶインセンティブが働きやすい。ただし、HBM4の大容量メモリはメモリ逼迫に悩むLLM運用者にとって現実的なソリューションであり、推論ワークロードに特化した導入が先行する可能性がある。

長期的視点では、UALinkエコシステムの成熟と真のUALinkスイッチの展開が鍵を握る。AMDはUALinkをオープン規格として推進しており、Intelやその他のアクセラレータベンダーも参加する可能性がある。もしUALinkが業界標準として普及すれば、NvidiaのNVLinkに対するオープンな代替選択肢が生まれ、AIインフラのサプライチェーン多元化につながる。1〜3年のスパンで見ると、NvidiaのVera Rubin後のプラットフォーム戦略や、業界団体Ultra Ethernet Consortiumの進捗がHeliosの評価を大きく左右することになる。

編集部として注目したいのは、Ethernetベースのスケールアップ接続が本当に実用的なパフォーマンスを発揮できるかどうかという点だ。ベンチマーク結果が公表されれば、専用インターコネクトとの差が明確になるだろう。また、UALinkスイッチの完成時期と、AMDがHeliosのアップグレードパスをどの程度スムーズに提供できるかも、顧客の購買意思決定に直結する要素である。

参考

よくある質問

Heliosとは何ですか?
AMDが発表した次世代ラックスケールAIシステムです。最大72基のInstinct MI455XアクセラレータとEPYC Venice CPUを搭載し、合計31TBのHBM4メモリを備えます。NvidiaのNVL72 VR200に対抗する製品です。
UALink-over-Ethernetの欠点は何ですか?
Ethernetは汎用ネットワーキング技術であるため、専用スケールアップファブリックと比較してレイテンシが高く、プロトコルオーバーヘッドが大きく、性能の決定性が低くなります。大規模AIトレーニングでは学習効率に悪影響を及ぼす可能性があります。
真のUALink版はいつ利用可能になりますか?
UALinkスイッチの最終化と顧客による検証・認定を経て提供開始されます。時期は未公表ですが、AMDはUALink-over-Ethernet版を先に出荷し、後日アップグレードパスを提供する計画です。
出典: Tom's Hardware

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