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3D印刷で人工卵殻を作りヒナ26羽孵化、絶滅種復活への道

絶滅種復活を掲げるColossal Biosciencesが、3D印刷技術で作製した人工卵殻からヒナ26羽の孵化に成功したと発表した。絶滅した巨大鳥モアやドードーの復活を目指す上で重要な一歩となる。

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3D印刷で人工卵殻を作りヒナ26羽孵化、絶滅種復活への道
Photo by aldi sigun on Unsplash

絶滅種復活(デエクスティンクション)を標榜するバイオテクノロジー企業Colossal Biosciencesが今週、3D印刷技術で作製した人工卵殻からヒナ26羽の孵化に成功したと発表した。同社にとっては、約600年前に絶滅した巨大鳥モアやドードーの復活という壮大な目標に向けた、実証的な成果となる。

人工卵殻とは何か Colossal

Biosciencesが開発した人工卵殻は、2つの主要コンポーネントで構成されている。一つは、酸素の透過を可能にしながら内部の内容物を保護する、半透性のシリコンベース膜ラティス。もう一つは、全体を保持する剛性のあるサポートカップだ。 胚は通常の方法で産み落とされたニワトリの卵から採取される。同社のブログ投稿によると、現在のワークフローでは実際のメスニワトリが産卵後24〜48時間以内に卵を検査し、生存可能な候補を選別した上で、殻を除いた内容物を人工卵構造に移し替える。受精から産卵までの上流の生物学的プロセスはすべて生きた鳥の中で行われ、人工卵は後段の孵化用コンテナとして機能するという。 つまり、人工卵殻は遺伝子操作の場ではなく、あくまで孵化環境を提供する技術だ。

なぜ人工卵殻が必要なのか この技術が必要とされる背景には、絶滅種の生物学的制約がある。モアの卵はエミューの卵のおよそ8倍の大きさに達するため、現存するどの鳥種もモアの卵全体を生成する代理母としての役割を果たすことは不可能だ。

巨大すぎる卵を産み、孵化させる工程を代替する手段として、人工卵殻技術は不可欠なピースとなる。

同社はドードーのプロジェクトではニコバルバトを代理卵生産候補として検討しており、モアについてはエミューまたはシギダチョウの利用を検討しているという。いずれにしても、大型の卵をそのまま孵化させるには現存種の身体的制約が大きいため、人工卵殻による後段の孵化支援が必要になる。

絶滅種復活への道筋と論争 Colossal

Biosciencesは以前、絶滅したダイアウルフの復活を試みたことで大きな注目を集めた。ただしその手法は遺伝子改変されたイヌ科動物を作り出したに過ぎないという批判も根強い。今回の人工卵殻の発表に対しても、懐疑的な見方が寄せられている。 ニューヨーク州立大学バファロー校の進化生物学者ビンセント・リンチ氏は、AP通信に対し次のように指摘した。「この技術を使って遺伝子改変された鳥を作ることはできるかもしれないが、それは遺伝子改変された鳥に過ぎない。モアではない」。リンチ氏はさらに、「卵の他のすべての部分を注ぎ込んだのだから、それは人工卵ではない。人工の卵殻だ」とも述べている。 この批判は本質的な問題を突いている。胚の元となる生物学的プロセスはすべて生きた鳥に依存しており、人工で作られているのは殻の部分だけだ。遺伝子的に絶滅種そのものを再現しているのか、それとも近縁種の遺伝子改変個体を作り出しているのかという問いは、デエクスティンクション分野全体に突きつけられた課題だ。

保全への応用可能性 一方、Colossal

Biosciencesは自社の技術が絶滅危惧種の保全にも応用可能だと主張している。現在も地球上には多くの絶滅危惧種が存在しており、そちらへの支援を優先すべきだという批判は絶えないが、同社は人工卵殻技術が保全活動にも貢献できるとしている。 人工卵殻技術は、卵の孵化成功率向上や、代理母を持たない大型鳥種の繁殖支援など、保全生物学における具体的な課題に対するソリューションになり得る。ただし、その実用化にはまだ多くの検証が必要だ。

今週のその他の科学ニュース

人工卵殻の話題以外にも、今週は複数の注目すべき科学ニュースが報じられている。 欧州宇宙機関(ESA)のSMILE衛星が打ち上げられ、地球の磁気圏の観測ミッションに向けて旅立った。SMILE(Solar wind Magnetosphere Ionosphere Link Explorer)は、太陽風と地球の磁気圏の相互作用を観察するミッションで、磁気嵐のメカニズム解明に貢献する狙いがある。 木星の衛星エウロパに関する研究では、エウロパから噴出するとされてきた水蒸気プルームの存在に疑問を呈する新たな研究結果が発表された。エウロパの地下海に生命が存在する可能性を探る上で、水蒸気プルームの有無は重要な論点だ。 さらに、SpaceXのStarship V3が初飛行を実施したことも大きな話題となった。 --- 3D印刷された卵殻からヒナが誕生するというニュースは、テクノロジーと生物学の交差点が生む可能性を示す興味深い事例だ。ただし、それが本当に「絶滅種の復活」なのか、遺伝子改変された近縁種の作出なのかという本質的な問いは、今後も科学コミュニティの間で議論が続くだろう。

よくある質問

Colossal Biosciencesの人工卵殻はどのような素材でできているか
半透性のシリコンベース膜ラティスと、それを保持する剛性のあるサポートカップの2つのコンポーネントで構成されている。膜は酸素を透過させつつ内部を保護する機能を持つ。
なぜモアの復活に人工卵殻が必要なのか
モアの卵はエミューの卵の約8倍の大きさで、現存するどの鳥種も代理母としてこのサイズの卵を産むことができない。大型卵の孵化工程を人工的に支援する手段として、人工卵殻技術が不可欠となる。
この技術に対する主な批判は何か
胚の元となる生物学的プロセスは生きた鳥に依存しており、人工で作られているのは殻だけである点が指摘されている。遺伝子的に絶滅種そのものを再現しているのか、近縁種の遺伝子改変個体を作っているだけなのかという疑問が呈されている。
出典: Engadget

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